ポリトコフスカヤはチェチェン報道のせいで暗殺された

アンドレイ・バビーツキ

2006年10月7日 ラジオ・リバティ(ロシア語版)
http://www.svobodanews.ru/Article/2006/10/07/20061007214906310.html


わたしはアンナ・ポリトコフスカヤをよく知っていましたし、チェチェンでは共に仕事もしていました。彼女はこの数ヶ月間ラムザン・カディロフによる牢獄の拷問に関する取材に携わっていましたので、まず頭に浮かんだのは、チェチェンの足跡、つまりチェチェン指導者層を暴露したことに対する報復ということであり、そしておそらくこの方向で捜査も進められていくことでしょう。

これは十分に根拠のある説だと思います。しかもこのことは今日既に何度となく述べられています。ラムザン・カディロフとその一味がチェチェンで行っていることを、アンナ・ポリトコフスカヤ記者は長期にわたって基本テーマにしていたのだと私には思われます。つまり彼女は、カディロフの事実上独裁、そしてチェチェンでの専横や暴力について書いていた最後の記者の一人だったのです。カディロフによるチェチェンがいかなるものなのかを示す具体的な事例についてこれほどまでに綿密な調査を行う記者は、今日誰一人としていません。

ラムザン・カディロフや、彼がチェチェンで行ったこと、その取り巻きによる残虐行為の多くについて、アンナ・ポリトコフスカヤは直接的に書いてきました。彼女が描く光景は、カディロフやそのPRグループが作り出そうとしているチェチェンのイメージとは全くかけ離れたものでした。現在カディロフのもとには十分な数の専門記者や政治学者が集まり、復興しつつあるチェチェンの姿を演出しようとしています。一方でポリトコフスカヤは各国で数々の会議や立派なフォーラムに出演し、「カディロフのチェチェン」で起きていることについて語ってきました。

ポリトコフスカヤがチェチェン報道のせいで暗殺されたとする説はとても有力であるように考えられます。けれどもたとえこの説に従って捜査が行われたとしても、犯人を発見できる見込みがいかほどなのか、正直なところ私には言い難いです。今日のロシアにおける政治的状況では、その可能性がきわめて低いもののように思われるのです。