アンナ最後のインタビュー記事「カディロフはチェチェンの大統領にはなれない」(抜粋)

アンナ・ポリトコフスカヤ最後のインタビュー(のひとつ)

記事について:記事の日付によればまさに彼女の死の直前、ロシアの人権団体の連合サイト、「カフカスキー・ウーゼル(コーカサスの結び目)」は、アンナ・ポリトコフスカヤにインタビューをした。その2日前の10月5日は、チェチェン親ロシア政権のボス、ラムザン・カディロフ首相の30歳の誕生日。
親ロシア派が定めた憲法によれば、チェチェン大統領の立候補資格は30歳以上であることだ。彼はチェチェンの大統領になる資格の一つを手にしたことになる。その憲法自体、眉唾ものの国民投票で決められたものだと言うことを別にすれば。

ポリトコフスカヤは、プーチンに対する批判者であると同時に、カディロフに対する強烈な批判者だった。その感覚はわかる。プーチンチェチェン戦争によって大統領に上り詰め、チェチェンをぼろ雑巾のようにし、ロシアも、意味は違えど相当にひどい状況だからだ。そしてカディロフは私兵集団「カディロフツィ」を率いて、ロシア軍とロシアからの資金供給を後ろ盾にして、同じチェチェン人たちを誘拐しては拷問し、身代金を奪ってきた。

ポリトコフスカヤには10月5日に生まれた男と、7日に生まれた男、その二人の敵がいた。彼女が射殺されたのは7日だが、どちらに殺されたか、あるいはまったく別なのか、まだわからない。(大富亮)

7/10/2006 Anna Politkovskaya: Kadyrov will never be Chechnya president
http://eng.kavkaz.memo.ru/newstext/engnews/id/1072060.html

プーチンがカディロフをチェチェンの大統領に任命したがるかどうかは知りませんが、いろいろ理由があって、任命したがらないんじゃないかと思います。

ラムザンはもちろん、任命されることを渇望していますよ」
ここ数ヶ月、チェチェンでの建設はラッシュに入っていた。学校、道路、噴水、それからグロズヌイ北空港。ここは、カディロフの誕生日に、おごそかに開業した。意義のある建築物を次々と作ることで、すべてが個人の管理下にあることを宣言したのだ。

「彼の<個人の管理>というのは、他の人たちへの脅迫−武器によるものと、建設資金です。そうした金は、連邦予算から出ているわけではありません」とポリトコフスカヤは言う。

「どうやって資金を満たしているかと言うと、差し押さえをしているんです。奪っている人みんなから。ビジネスマンだけじゃありません、たとえば官僚たちからも。チェチェンの官僚たちは、まあロシアならどこでもそうですが腐敗しています。彼らは正規の給料以外に、かなりな金額を<貢がれ>ているんです。資料がないから細かい数字は言えませんが。いまのところ、非常事態省の職員が検察官事務所に出した書類のコピーが手元にあります。彼らは給料のほとんどと、それ以外に13000ルーブルを支払わされたと怒っています」

(ラムザンは、賄賂をとっている役人から、さらに金を巻き上げているという意味)

「そういう差し押さえの中には、たとえばグデルメスで開かれたような、何人もスターが出てくるくだらないコンサートに強制的に行かせる、あるいはショーの切符を買わせるというのがあります。正規の4倍もの値段で、何枚も買わされたり。彼らはそうしているんです。その<買い手>がふたりほど、このことを私に言ってきたことがあるんですが、その人たちはある省庁の副大臣でしたね」

ポリトコフスカヤによると、カディロフは連邦予算の獲得工作もしている。膨大な建設コストを回収したいからだが、連邦財務省は難色を示していて、まず計画書類や、コスト計算書を出すように要求している。「この建設ラッシュには、そんなものはもともとないんです。だから、カディロフはモスクワにしょっちゅう来て、そういう文書なしでプーチンに金を出させようとしていました。でもそれもうまくいかなかったんです」
そういった新しい建築物の品質はとても低いと彼女は言う。「ええと。品質なんてものはありません。どんな意味でも。私なら、グロズヌイに行くときに、ぜったいグロズヌイ空港は使わずに他のところを経由しますね。あそこだけは勘弁してほしい」

カディロフが指定した日に、そうした建築物が完成しないような場合、「<実力行使>がされます。もちろん、普通の労務者がそんな目に遭うわけではないです。そういうところには多すぎるほど<監督>がいます。彼らは誘拐されたり、拷問されたりします。現地ではよく知られています、こういうことは」