広がる「プーチン礼賛」 ―議会選へ政権与党「個人崇拝」演出か―

 こちらも10月28日の東京新聞からの紹介です。それにしても、「憲法とは国民の願いを集約した規約だ。ならば国民の大半が願うプーチン大統領の三選は憲法違反ではない」という主張は、いったい何なのでしょうか。

 【モスクワ=稲熊均】来年五月に任期満了となるロシアのプーチン大統領に対し、政権運営の継続を求める大規模な集会が同国各地で開かれている。いずれの集会も、ロシアに政治的な安定と経済の成長をもたらしたとして大統領を礼賛。年末の議会選勝利に向け、政権与党が大統領への「個人崇拝」の機運を高め、求心力を強める狙いで仕掛けた集会とみられている。

 ロシア各地、大規模集会

 集会は、二十三日にロシア中南部ボルゴグラードや極東カムチャッカで数千人規模で開催されたのを機に、ロシア全土に広がった。二十四日にはチェチェン共和国の首都グロズヌイやモスクワ近郊のトベーリで数万人が参加。今月末から来月初めにかけて各地で開催が予定されている。
 ロシアでは憲法の規定で大統領の連続三選は禁じられ、プーチン大統領は来年春の大統領選挙に出馬できない。しかし、集会では「憲法とは国民の願いを集約した規約だ。ならば国民の大半が願うプーチン大統領の三選は憲法違反ではない」との主張が目立っている。
 こうした市民集会のほか、地方では議会が大統領に続投を呼びかける抗議文を採択する動きも出ており、来月初めにロシア中部のチェリャビンスクやチュメニ両州で決議されるのを皮切りに、ロシア各地で審議が開始されるとみられている。
 また、米アカデミー賞外国語映画賞)受賞監督のミハルコフ氏らロシアを代表する文化人らが連名で「ロシアの文化、芸術復興をもたらした最大の功労者はプーチン大統領」などとして政権の継続を求めるメッセージを政府系ロシア新聞に寄稿。政財界だけでなく知識人まで大統領礼賛の姿勢を強めている。
 ロシアでは、今月七日の大統領の誕生日以来、プーチン氏をたたえる演劇「大統領の休日」が各地で上演されるなど、大統領への「個人崇拝」色が濃くなっており、二十六日付のリベラル紙ベドモスチは、ロシア国民の49%が既に「プーチン個人崇拝」を感じていると答えた、と報じた。
 年末の下院選に向け、大統領を比例代表の名簿第一位とした政権与党「統一ロシア」は、支持率70%を超すプーチン人気をさらに高めることで、圧勝を狙っている。

 ちなみに、チェチェンで開催された「数万人」規模のプーチン万歳集会の実態はこちら:
 2007年10月24日 プラハ・ウォッチドッグ
 原文: http://www.watchdog.cz/?show=000000-000004-000001-000211&lang=1

 プーチンの大統領任期延長を求める集会がチェチェンで開催される
 ルスラン・イサーエフ

 チェチェン―本日、ウラジーミル・プーチン大統領の任期延長を求める3つの集会が、チェチェンで開催された。当局によると集会には約2万人が参加したという。
 グローズヌイの集会はスルタン・ベリムハノフ・スタジアムで開催された。主催者発表によると参加者は1万人以上。ただし、参加者がプラハ・ウォッチドッグに語ったところによると、サッカー競技場に集められた参加者はせいぜい3000〜4000人だったという。
 参加者のほとんど全員が、グローズヌイにある3校の大学の学生だった。大学は、学生を集会に動員するために、授業を休講にしたという。「授業がなくなって、そのままバスに詰め込まれて、スタジオに連れてこられたと思ったら、統一ロシアの旗を渡されて一時間くらい立たされたってわけ。ロシア国旗を振らされたり、プーチンの写真を持たされた人もいたけど。これって結局何のイベントだったのかしら?なんだかプーチンと関係あるみたいだったけど」(ミラーナ 大学二年生)
 集会の参加者は、プーチン大統領の再選を求めるロシア全土の同志への結束を呼びかける決議を採択した。
 チェチェンでは、今年の五月に、共和国人権オンブズマンのヌルディ・ヌハジーエフが、ロシア連邦大統領の任期延長を求める最初の運動を行った(参照)