再臨界の可能性
Index:
今日のトピックス/この日記の目的/福島第一原子力発電所の状況/使用済燃料プールの冷却/タービン建屋の汚染水/空気を経由した汚染/海水を経由した汚染/地下水を経由した汚染/モニタリングデータ/計画停電は何のため?/イベント情報
今日のトピックス 再臨界の可能性
今日は深刻なニュースです。依然として高い放射能を出している1〜3号機ですが、「もしかしたら再臨界が始まっているかもしれない」と、京都大学原子炉実験所の小出助教が指摘しています。助教の指摘は次のようなものです。
ピット内の汚染水のヨウ素は1.3億倍。半減期は8日間であり、もう1/10になっていいのに減っていない。原子炉は一度止まったと(ウランの核分裂が止まる)思っていたが、それがもう一度核分裂(再臨界)が起きているかも知れない。
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/5d715f7410e7558344c27ec929d2f619
再臨界というのがどんなものかというと、溶融した炉心の燃料が、一定の条件のもとで、再び核反応を始めるというものです。こうなると、制御ができません。
再臨界が起こると核分裂反応の制御は非常に困難となり、大規模なエネルギーが発生して原子炉内で爆発し、大気中に放射性物質の飛散する結果を招く。最悪の結果、「チェルノブイリ原発事故」と同様の、「国際原子力事象評価尺度レベル7」に分類される、広範囲で大規模な放射性物質汚染を招くおそれがある。 http://www.weblio.jp/content/%E5%86%8D%E8%87%A8%E7%95%8C
とも。3機のうち一つでも爆発をしてしまった場合、他の原子炉への対策も、すべて後退してしまいます。
東電、政府、保安院は早く炉心に関する正確な情報を公開してほしいと思います。結果として「避難パニック」などというものが生まれるのならば、それは的確な避難指示によって、政治的に解決すべきものでしょう。科学と政治は別の次元の問題なのですから。
この日記の目的
福島第一原発事故に関する情報を、手短にまとめる試みです。不正確な点がありましたら、どうぞメールなどでご指摘下さい。情報提供も歓迎します。 editor@chechennews.org
サイトの内容の引用やリンクはご自由にどうぞ。
福島第一原子力発電所の状況
外部電源はすべての制御室に届いたが、冷却システムは依然として復旧していない。東京電力は「2、3号機の冷却システムの一部の復旧のめどが立った(4/1読売)」としていたが、その後報道がない。もしシステムが稼働しても、2号機はすでに圧力容器・格納容器とも破けているので、冷却が十分にできるとは考えにくい。できたとしても、汚染水の排出が拡大する。
1号機 | 2号機 | 3号機 | 4号機 | |
製造 | 1971年GE製 | 1974,GE,東芝 | 1976,東芝 | 1978,日立 |
空中写真 | ||||
主な出来事 | 3/12 水素爆発(原子炉建屋) | 3/15 水素爆発(圧力抑制プール) | 3/14 水素爆発(原子炉建屋) | 3/15 水素爆発(使用済燃料貯蔵プール) |
原子炉 | 燃料400体。炉心溶融。燃料棒の一部が露出、損傷の疑い。温度低下、ノズル部で233度。圧力容器に真水注入中 | 燃料548体。炉心溶融。圧力容器に穴。圧力抑制プール損傷。圧力容器に真水注入中(!)。 | 燃料548体。炉心溶融。燃料棒の一部が露出、損傷の疑い。圧力容器に真水注入中 | 燃料なし |
燃料の損傷率* | 70% | 33% | 25% | - |
使用済燃料プール | 燃料292体。水位、水温不明。外部注水中 | 燃料587体。水位不明、水温(71度)。外部注水中 | 燃料514体。水位、水温不明。外部注水中 | 燃料1331体(!)。水位、温度不明。外部注水中 |
高濃度汚染水 | 放射能値1000倍(炉心冷却水との比較)。複水器から貯蔵タンクへ移送中。取水口付近で1万9000ベクレル | 放射能値10万倍(同)。複水器から貯蔵タンクへ移送中。取水口付近の亀裂から、汚染水(放射線量は1000ミリシーベルト毎時)が流出中。取水口付近で30万ベクレル | 放射能値1000倍(同)。取水口付近で1万5000ベクレル | 取水口付近で1万4000ベクレル |
その他 | ウランとプルトニウムを混在させたMOX燃料を装荷。制御困難に陥りやすく、拡散した場合に毒性が最も高い。 | |||
主な出典 | *(2/25東電発表値を採用)朝日新聞1号機核燃料「最大で7割損傷」 米エネルギー省認識 http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104020194.html 東京新聞連載「福島第一原発の現状」、NewYorkTimes"Status of the Nuclear Reactors at the Fukushima Daiichi Power Plant"など 空中写真はPhotos of the Day - Fukushima Dai-ichi Aerialsより |
|||
使用済燃料プールの冷却
すべて生コン圧送機で注水中。1、3、4号機の温度、水位不明。2号機の温度は不安定。(4/1:58度 4/1:72度 4/2:61度 4/3:50度 4/5:71度)
大気を経由した汚染
ドイツ気象庁による放射性物質の飛散予測(むこう3日間)。放出源の濃度が分からないため、気象データを基にした「相対的」な予測です。つまり、ベントや爆発などによって放射性物質が放出された場合に、どのように拡散するかをシュミレートしたものなので、この図から危険度を評価することはできない、ということのようです。くわしい説明はこちらを:"with eyes closed." by Kan Yamamoto http://www.witheyesclosed.net/post/4169481471/dwd0329
海水を経由した汚染
2号機ピットにたまった汚染水が継続的に流出中。この水の線量は1000ミリシーベルト毎時(近くにいると吐き気がしてくるレベル。作業が進まないのも無理はない)。直近の海水からは1ミリリットルあたり最高30万ベクレルの放射能を検出している。止水材によって流出は減少している。
政府と東電は「海水の放射能は拡散することで放射線量が減少するので影響は少ない」としていますが、実は拡散した核種をプランクトンが吸い込み、それを魚が食べ・・・という形で、食物連鎖のなかで、蓄積されていきます。そして高濃度に汚染された魚介類を、私たちが食べるわけです。
原発から南に約70キロ、北茨城からの通信では:小女子(コウナゴ)から、暫定規制値を上回る1kg当たり526ベクレルのセシウム(半減期30年)を検出しました。(東京新聞4/6)
今後は、規制値の変更(緩和)にも注意しなければなりません。
モニタリングデータ
首相官邸のサイトより:放射線モニタリングデータ
http://www.kantei.go.jp/saigai/monitoring/index.html
計画停電は何のため?
東電サイトより:よくあるご質問 なぜ計画停電を実施する必要があるのですか?
その回答 国内観測史上最大の地震の影響により多数の発電所が停止しております。そのため想定する需要に対して供給力が不足する見通しで、不測の大規模停電を防ぐために、やむを得ない緊急事態となりましたので、計画停電を実施させていただいております。
http://tepco.okbiz.okwave.jp/EokpControl?&tid=143144&event=FE0006
電気は本当に足りないのでしょうか?
「随時調整契約を結ぶ大口事業者への供給を抑えれば、計画停電で社会全体に迷惑をかけずにすむ。本当に全契約者に使用削減を要請しているのか。計画停電の被害を軽く考え、『やはり原発は必要』と思わせようとしているのではないか」(経済ジャーナリスト 萩原博子 東京新聞4/4特報面より)
まず、東電が毎日発表している(同時に、その日しか見れない)電力需給のグラフです: http://www.tepco.co.jp/forecast/index-j.html
東電発表による、4/6の供給量=4,000万kw
東電発表による、4/6の需要量=3,350万kw(A)
さて、当方で電力供給量を集計してみました。こちら:2011keikaku.xls
この集計では最大出力での供給量=4,528万kw(B)となります。したがって、少なく見て650万kwの余裕(東電見積)、多く見て(B-A)=1178万kwもの余裕(大富見積)があります。計画停電の必要性はまったくありません。
なお、東電管内で唯一稼働中の柏崎原発の総出力が491万kwですから、もしこれを停止させても、停電は必要ないことになります。
原発は必要ありません。