チェチェンニュース Vol.08 No.09 2008.09.26 

http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20080926/1222402231 (HTML版) 発行部数:1648部
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INDEX

* Good news! 欧州人権裁判所、ロシア政府に20万6千ドルの支払いを命令
* ルスラン・ヤマダエフ、モスクワで銃殺される
* 「子どもの物語にあらず」無料配信開始!
* イングーシ情勢
* イベント情報

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欧州人権裁判所、ロシア政府に20万6千ドルの支払いを命令

 ヨーロッパ人権裁判所が重要な判決を出しました。次にとりあげる「ヤマダエフ殺害事件」にかき消されて、世界的にもあまり報道されていないようです。報道関係の方は、ぜひ掲載をおねがいします。末尾に元記事へのリンクを置きます。

 9月4日、ヨーロッパ人権裁判所(ECHR)は、チェチェン戦争で誘拐・殺害された被害者の2家族からの訴えに関し、賠償として20万6千ドル(2千万円程)の支払いを、全判事一致の判決で命じたことが、25日になって明らかにされた。

 アドナン・アフマドフの両親は、2002年に息子が誘拐された事件に、ロシア当局が関わっていると主張していた。アドナンはロシア兵士によって逮捕されたことが証言によって明らかだったためである。ロシア政府はこれを否定していたが、裁判所には認められなかった。

 また、ルスラン・メジードフは、両親や兄弟姉妹が、99年のロシア軍による村への砲撃で殺害されたとして同裁判所に訴えていた。ロシア側は砲撃の結果に関して軍は責任を負わないという主張だったが、これも認められなかった。

 今年初め、欧州評議会(COE)は、ロシア政府に対して、治安部隊によるチェチェンや他のコーカサス地域への人権侵害(虐待や処刑)を強く批判していた。

 ヨーロッパ人権裁判所はここ10年の間に、合計して46,700件のチェチェン人からの訴状を受け取っており、そのうち正式な手続きに入っているものは2割ほどだという。(RIAノーボスチ)

http://en.rian.ru/society/20080925/117106711.html

 欧州人権裁判所のプレスリリース:

http://cmiskp.echr.coe.int/tkp197/viewhbkm.asp?sessionId=14129764&skin=hudoc-pr-en&action=html&table=F69A27FD8FB86142BF01C1166DEA398649&key=72876&highlight=Chechnya

http://cmiskp.echr.coe.int/tkp197/viewhbkm.asp?sessionId=14129787&skin=hudoc-pr-en&action=html&table=F69A27FD8FB86142BF01C1166DEA398649&key=72914&highlight=Akhmadova%20|%20Akhmadov

 過去の関連記事: http://chechennews.org/chn/0506.htm
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20080611/1213164486
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20051220/1135092095
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20050228/1116317336

ルスラン・ヤマダエフ、モスクワで銃殺される

 9月24日、議員で軍人だったルスラン・ヤマダエフが、モスクワ市街中心部で銃殺された。犯人はロシア議会近くで信号待ちしていたヤマダエフのベンツに銃弾数発を撃って逃走した。ベンツに同乗していたロシアのチェチェン派遣軍のセルゲイ・キズーン元司令官は重傷を負ったという報道があった。

 いろいろ恨みを買いそうな経歴の持ち主なので、誰に殺されてもおかしくない気がするが、いちばん最初に挙げられるのは、やはり対立していたラムザン・カディロフだった。両方とも、ロシア英雄章を受章している。

 親ロシア派は、そもそもロシアに養われている存在で、資金や武力が供給されなければ、民衆の中に根がない。そういう人たち同士の争いだが、ヤマダエフの弟で野戦司令官のスリムが「カディロフに復讐を誓う」と言い出したことから、この件は先行き不透明になっている。

 ロシア側としては、ある程度まで彼らが分裂していてくれたほうが、扱いやすいのではないかと思う。

 関連記事: http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20080925

「子どもの物語にあらず」無料配信開始!

 チェチェンの子どもたちが語るチェチェン戦争。2003年に、アムネスティ・インターナショナルのスピーキングツアーで招待されたザーラ・イマーエワさんによるドキュメンタリー映像が、ネット上で公開されました。無料で見ることができます。

 20分程度の短い作品ですが、子どもの見たものが、とつとつと語られるこの作品は、2000年前後の、洪水のような「テロとの戦争」というプロパガンダの中で、宝石のような貴重さを感じさせました。ぜひご覧下さい。以下、紹介文より。なお、ウィンドウズ・メディアプレイヤーが必要なようです。

 作品の冒頭と末尾で少女が唄うのは、北コーカサス随一の美しい公園都市であった首都グローズヌイを頌えるもの。子どもたちのおぞましい体験の証言に交錯するニュース映像のロシアの大人たちの勝手な言い分が、この汚い戦争の本質を暴いて強烈なメッセージを発している。人口たかだか100万だったチェチェン人は、1994年に始まり、今もだらだらとゲリラ戦がつづく今日までに、大半を非武装民間人が占める25万の人命を失なった。そのうち4万人は、罪なき子どもたちである。

 こちらで見ることができます: http://kagakueizo.org/movie/sdn_kodomo-no-monogatariniarazu.html

イングーシ情勢

 8月31日に、チェチェンの隣のイングーシ共和国の反体制活動家エブラエフ氏が死亡した事件が発端となって、イングーシでは「テロ」が続発していると言う報道が各社からあった。イングーシでテロ続発 反ロ勢力官庁襲撃 隣国への拡大懸念[東京 9/21]や、 露イングーシで警察官襲撃、2人死亡[AFPBB 9/1]など。

 http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2512745/3281477

 これによると、警官駐在所が襲撃を受け、軍の将校が銃殺され、議会副議長宅が銃撃されるなどの事件が続発しているという。平和的に体制批判する人物を文字通り抹殺してしまえば、武装闘争が活発化するのはあたりまえだ。

 イングーシではしばらく前から、チェチェン独立派と関係のあるグループによる武装蜂起事件や、取締りを名目とした人権侵害などが続いていた。これについては、アムネスティのリリースに詳しい。イングーシの人権活動家に対する拘禁と暴行の調査を[amnesty 7/25] ,ロシア連邦 : チェチェンの過ちを繰り返してはならない[amnesty 2007.10.25]

 http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=508
 http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=399

 と、こういう状況が続いているので(今はロシアの傀儡であるラムザン・カディロフの圧制下に置かれているチェチェンでの抵抗活動は活発ではないが)、ローカルなレベルでも、国際政治の力学のレベルでも、人々の命が次々と売り買いされているコーカサスでは、人々の不満を土台にした武装闘争は拡大に向かっていると思う。

 イングーシで起きているのはテロというより抵抗ではないだろうか。

イベント情報

9/6-10/13 本郷台:野町和嘉写真展『地球巡礼』

厳しい自然と向き合いながら生きる人々の文化性と力強さ。グローバリゼーションによって変わりつつある人々の心。30年余に渡って撮りつづけてきたピルグリム
http://www.crevis.jp/event/nomachi01.shtml

9/13-10/25 東松山:今日の反核反戦展2008

正義の戦争などどこにもない。誰でもそう直感している。反戦反核を訴えるアーチストたち。 http://www.aya.or.jp/%7Emarukimsn/kikaku/2008/hansen/hansen.htm

10/4,5 日比谷:グローバルフェスタJAPAN2008

国際協力に関するNGOが集う日。日比谷にて。「世界に響け!地球を守るメッセージ」ジュマネット、難民支援協会なども出展。 http://www.gfj2008.com/

10/10 早稲田:第4回国際シンポジウム『東南アジアの紛争と平和』

「東南アジアの紛争」とはそもそも何なのか、宗教、民族問題、それとも政治経済的背景のなかでとらえられうるのか。海外ゲストを招き、深く議論します。 http://www.nindja.com/modules/eguide/event.php?eid=15

10/18 文京:連続セミナー・<ナクバ60年>を問う【第3回】ヨルダン渓谷問題から日本のODA援助政策を問う

エルサレムの重要性が注目される陰に隠れてきたヨルダン渓谷地帯。
ここで日本が進める開発計画「平和と繁栄の回廊構想」のあり方を、
現地からの証言をもとに問題化する。 http://midan.exblog.jp/9715118/

映画など

12人の怒れる男

養父殺しの罪に問われるチェチェン人少年。12人の陪審員は、激論の末真実にたどりつく。 http:/www.12-movie.com

『ビリン・闘いの村』

パレスチナ暫定自治区ヨルダン川西岸のビリン村。若者たちは非暴力の闘いに立ち上がった http:/www.hamsafilms.com/bilin/

おいしいコーヒーの真実

世界第三位のコーヒー消費国日本。あなたがスターバックスで支払ったコーヒー代はどこに行く?コーヒー好きの誰もが見るべき映画です http:/www.uplink.co.jp/oishiicoffee/

『光州5.18』

韓国現代史や民主化運動に関心を持つきっかけに。1980年、韓国で起きた<光州の悲劇>を完全映画化 http:/may18.jp/

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