チェチェンニュース Vol.08 No.13 2008.11.05

http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20081105/1225815027 (HTML版)
発行部数:1652部
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 こんばんは、チェチェンニュースです。
 4月に来日したチェチェンの外科医ハッサン・バイエフ医師が、
 ふたたび来日し、東京で講演会を催します。
 滞在費やチェチェンに持ち帰る機器のための募金を
 募っています。どうかよろしくおねがいします。

 今回のニュースでは、バイエフ医師の来日と、
 3月に亡くなったチェチェンの難民のこと、
 そして最近のチェチェン・イングーシの情勢について
 まとめています。

 チェチェン連絡会議のニュースレターの内容と同じなのですが、
 郵便で受け取りたい方は、ご住所を clc[at]chechennews.org まで
 お知らせください。イベントのチラシなど、
 内容に関係する情報も含めてお届けしています。

 新聞で報道されましたが、
 イングーシ共和国のジャジコフ大統領が更迭されました。
 チェチェン以上に不安定な状況が続くイングーシのことも、
 取り上げていきたいと考えています。
 情報がありましたら、お知らせください。

 (大富亮/チェチェンニュース)

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INDEX

* ハッサン・バイエフ医師の招聘に、ご協力をお願いします
* イベント情報

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ハッサン・バイエフ医師の招聘に、ご協力をお願いします

 今年4月、みなさまにご支援をお願いしましたハッサン・バイエフ医師の招聘は、いわき、仙台、東京、水戸、札幌、京都、大阪、山口の講演会場で、計600人におよぶ方々が来場され、多くの人にチェチェンを知ってもらうという目的を果たすことができました。ご協力に感謝を申し上げます。

 また、2ヶ月間の滞在中、埼玉医科大学総合医療センターと東京・信濃町の大城クリニックの好意により、無償で先端医療技術を学ぶことができました。このことは、外科医として手術台の前に復帰することを目指すバイエフ医師への大きな支援となりました。

 バイエフ医師は、口唇口蓋裂という病気の治療に力を入れています。これは、生まれつき唇の形が大きく歪むという病気です。妊娠中の母体がストレスを受けると発症するもので、これまでチェチェンでは、ほとんど見られませんでした。因果関係ははっきりしないものの、戦争の時期を通じて急激に増えたとのことです。

 ところで、幸運なことに、学術団体の日本レーザー医学会が、この11月に再びバイエフ医師を招聘する運びになりました。そこで、ハッサン・バイエフを呼ぶ会が中心になって、市民を対象とした講演会が11月12日水曜日に開催されます。これについては、同封のチラシをご覧の上、ぜひ足をお運びください。

 なお、チェチェン連絡会議とハッサン・バイエフを呼ぶ会はこれまでも連携して活動をしてきましたが、ハッサン・バイエフ呼ぶ会は「チェチェンの子ども日本委員会」と改称し、独自に活動する方向を模索しており、チェチェン連絡会議は同会を通じてバイエフ医師への支援を行ないます。

 11月の招聘は、航空運賃をレーザー医学会が負担しますが、それ以外の経費の多くは市民の皆さまのカンパに頼る形となります。

 また、バイエフ医師がチェチェンでの医療活動に加えたいと考えている低出力レーザー治療器(本来は患者の痛みを和らげるものですが、戦争の結果である火傷痕、手術痕などの除去に使用します)の購入費を含め、数十万円程度の募金を、皆さまにお願いいたします。

 小額でも結構です。ぜひ、同封の郵便振替用紙にて、募金をお願いいたします。

日本で生活するチェチェン難民について

 今年、もう一つの事件がありました。今年3月、チェチェンから日本に来ていた難民のRさんが、病院で死亡しました。彼は2年前に来日し、難民認定を申請したあと、日本語を学び、千葉県で働きながら、認定結果が出るのを待っていました。

 しかし昨年10月ごろ、体のあちらこちらが痒いと訴えはじめ、12月下旬に病院に行ったところ即日入院を勧められました。肝機能障害によって体中に黄疸が出ていました。ボランティアの一人が通院につきそい、病状を見守り、さまざまな資料を調べ、少しでも回復するように医師とも話し合いを続けたのですが、症状は悪化の一途をたどり、多臓器不全により、3月21日に死亡しました。原因は最後までわかりませんでした。

 私たち日本人にも多少そういうところがありますが、チェチェンの人々は、遺体を生まれた土地に還すことを強く願います。そこで彼の死後、主にメールなどで告知して募金(計172万円)を集め、無事に、遺体をチェチェンの親族のもとに届けることができました。遺体の搬送費を別にした残金は、葬儀のために遺族に送金されました。これについては、個別に募金をしてくださった皆様をはじめ、イスラム教徒のコミュニティーや、千葉県での支援者の方々の協力がなければできませんでした。この場を借りて、厚く御礼を申し上げます。

 さて、難民の問題について、もう少し説明をいたします。

 この知らせを読んで、日本にチェチェンの難民が来ていたことに驚かれた方も多いかと思います。難民問題には微妙な部分があり、たとえばその人の名前や年齢につながる情報を、本人の同意なく広めることは、基本的にできません。もし難民認定が下りず、やむを得ず国に帰った場合に迫害を受ける可能性が高まるからです。

 したがって、難民の医療や、弁護士費用などのために募金を募る場合は、往々にして突然、しかも限定された情報しか公開できません。

 今回のケースが最後の段階まで皆さまにお知らせできなかったことには、こういった背景があります。このような形で皆さまにご支援を求めることには私たちとしても心苦しく、他の方法はないものかといつも思います。

 しかしこの問題の根本には、チェチェン戦争による難民の流出が今も続いていることがあります。また、難民申請から2年もの間、申請者を放置してきた法務省・入管当局の態度にも、問題があると言わざるを得ません(チェチェンだけでなく、他の地域からの難民申請者に対しても、同様の扱いがされています)。

 いずれにしても、これからもチェチェンからの難民が日本に着くことが予想されます。その場合のために、チェチェン連絡会議としては、一般寄付金として皆さまからの募金をお受けしてまいります。どうぞご協力をお願いします。

チェチェンに関連する映画

 来年1月に、東京でアムネスティ・フィルムフェスティバルが開かれ、人権問題に関連する9本の映画が公開されますが、うちひとつは、2年前に暗殺されたジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤに関するもので、「アンナへの手紙」(エリック・バークラウト監督)という作品です。プーチン政権のチェチェン侵攻を激しく批判していた彼女へのオマージュで、とても素直なつくりの映画です。くわしくは同封のチラシをご覧下さい。
 また、同時期に東京・渋谷区のユーロスペースでは、「チェチェンへ−アレクサンドラの旅」(アレクサンドル・ソクーロフ監督)という映画も公開されます。くわしい上映情報は、ユーロスペース(03-3461-0211)までお問い合わせください。

最近のチェチェンの状況

 11月12日に開かれるバイエフ医師の講演会では、医療活動への取り組みや、現在のチェチェンの状況が語られる予定ですので、具体的な事柄はそちらに譲りますが、全般的にチェチェンでの戦闘は縮小する傾向にあり、外国からのアクセスも比較的自由になりつつあるようです。

 「メモリアル」をはじめとするロシアの人権NGOも、首都グローズヌイに事務所を置いて活動するようになっており、人権状況の改善が期待されます。バイエフ医師も親ロシア派の政府当局とも一定の連絡をとりつつ活動しているとのことです。

 しかし、その一方で、チェチェンに隣接するイングーシ共和国(人口46万人)では、現地の人権活動家が「すでに内戦が始まっている」というほどの混乱が起こっています。

 プーチン大統領(当時)によって任命されたイングーシのジアジコフ政権(10月30日辞任、後継未定)は、人権活動家の逮捕や、監獄での処刑などを行なっており、腐敗の横行ともあいまって、人々の不満が高まっています。

 また、ロシア軍はこの地域での掃討作戦を強化していることから、アムネスティ・インターナショナルは、「イングーシをチェチェンの二の舞にするな」という声明を発表しています。

 イングーシでは2004年以降、市民に一定の支持を得た武装抵抗勢力が育っており、チェチェン独立派の一部も合流して、政府やロシア軍部隊に対してたびたび奇襲攻撃をかけるなど、騒然とした状況です。

 一方、ヨーロッパに逃亡している、およそ10万人のチェチェン難民の帰還のめどはたっていません。チェチェンから新たに逃亡しようとする人々の多くはヨーロッパを目指すのですが、ビザが出なかった場合、日本のビザを申請し、難民認定を求めることになります。難民の流出は今も続いています。

 こういった情報を総合すると、チェチェンを含む北コーカサス地域はいまだに不安定な要素を抱えており、比較的平穏と見られるチェチェンでも、見えないところで抑圧が続いている可能性があります。また、イングーシでチェチェンと同じような戦争が始まる可能性も、排除できません。

 もう一度、皆さまのご協力に心から感謝を申し上げます。ひきつづき、チェチェンにご注目くだされば幸甚です。

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イベント情報

11/12 春日:チェチェン人外科医ハッサン・バイエフ講演会・戦争被害の子どもたちを救おう〜チェチェンでの小児医療への取り組み〜

戦災復興が進められるチェチェンの首都グローズヌイ。子どもたちへの医療を中心に活動するハッサン・バイエフ医師が来日し、東京で講演する。 http://chechenchildren.jpn.org/1112meeting.pdf

1/17,18 新橋:アムネスティ・フィルム・フェスティバル(『アンナへの手紙』上映あり)

今日、映画を観る自由があった。私たちが当たり前に思っていることさえかなわない人々がいる。
その人々のことを知ろう。 http://www.amnesty.or.jp?aff09

11/8 白金台:シンポジウム『アジアの先住民族・マイノリティ女性たちからの提言 差別と暴力をなくすために』

バングラデシュチッタゴン丘陵地帯と日本をつなぐ共通の課題は何か? アイヌ、沖縄も視野に入れ、多彩なゲストが語る。 http://daily.jummanet.org/?eid=873026

12/13 御茶ノ水:「終焉に向かう原子力」(第7回)

なぜ、六ヶ所再処理工場の運転を阻止しなければならないのか。密かに進む日本の核武装計画を決して許してはならない。研究者と気鋭のライター、作家が語る。 http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20081016/1224110381

12/1 荻窪:杉並・憲法の夕べ

変転する政治環境、いまこそ憲法問題の本質を。辻井喬さんの講演、市原悦子さんの朗読。 http://www.kateryna-music.com/main/images/flyer07.jpg

12/13 大阪:アフガニスタン・レポート 混迷の大地で

混迷を深めるアフガニスタン情勢。米軍、ISAFの爆撃は続き、タリバンの反撃もあって犠牲者は増加している。現地で取材を続ける白川徹さんの講演。 http://rawaren.blog36.fc2.com/

12/18 蒲田:カテリーナ・グジー クリスマス☆コンサート

ウクライナの歌姫、カテリーナ・グジーさんの民族楽器による演奏と歌。 http://www.kateryna-music.com/main/index.html

1/17,18 新橋:アムネスティ・フィルム・フェスティバル

(「アンナへの手紙」上映あり)今日、映画を観る自由があった。私たちが当たり前に思っていることさえかなわない人々がいる。その人々のことを知ろう。 http://www.amnesty.or.jp?aff09

映画・写真展など

11/21-12/7 下北沢:燐光群公演『戦争と市民』

戦争は、まだ終わっていなかったんだね…。防空壕跡に居ついた女性が目覚め、世界を変えようとする。「街」、「市民」の概念を洗いなおす。 http://www.alles.or.jp/%7Erinkogun/sensoutoshimin.html

『ビリン・闘いの村』

パレスチナ暫定自治区ヨルダン川西岸のビリン村。若者たちは非暴力の闘いに立ち上がった。 http://www.hamsafilms.com/bilin/

おいしいコーヒーの真実

世界第三位のコーヒー消費国日本。あなたがスターバックスで支払ったコーヒー代はどこに行く?コーヒー好きの誰もが見るべき映画です http://www.uplink.co.jp/oishiicoffee/

『光州5.18』

韓国現代史や民主化運動に関心を持つきっかけに。1980年、韓国で起きた<光州の悲劇>を完全映画化 http://may18.jp/

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