熱にうかされたように

思い入れを持つようなことは、たいてい一時的なものなので、少しづつ冷めていく。かえって、後から考えると思い出すのが恥ずかしいくらい、つまらない記憶になることもある。

 けれども、ある思い入れを行動の根底に置く時期を生きることは、その人にあとあとまで残る痕跡を作り出す。なにより、その時期があったことは変えようがない。歴史になった事実をどう読むか、それだけが、過去の自分とは別の人格に変化した自分に、それぞれの人に、任されている。

 そうこうするうちにも、時間は過ぎていき、いずれ過去の量が未来の量を食い荒らし、変えられない事実だけが増えてゆけば、もう記憶を再編成するいとまもなくなっていくはすだ。

 書庫は少しづつ埋まっていって残りのスペースがなくなり、これを書いている机の上で、ボールペンのインクも切れてしまう。歴史的な事実の次に、もう一つの事実がやってくる。ーー作り出される。