日本の核開発を止めようとしたアメリカ人科学者

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今日のトピックス 日本の核開発を止めようとしたアメリカ人科学者

 おはようございます。福島原発から200キロほど離れた私の家も、一日に何度も揺れます。いつ起こるかわからない東海地震に備えて、今すぐにも浜岡原発を止めてほしいと、祈るような気持ちで毎日思います。3月11日の巨大地震によって、日本の火山の活動が活発化しているのです。

大震災後、全国20火山で地震活動が活発化(読売新聞 4/8)
 気象庁は8日、3月に発生したマグニチュード(M)6以上の地震は77回を数え、過去3年の月平均の約50倍に上ったと発表した。
 また、全国の20の火山で平常時よりも地震が増加したとしている。同庁地震火山部は「東日本大震災以降、全国的に地震活動が活発化しており、大震災との関連性は否定できない。歴史的には巨大地震から数か月後に火山が噴火した例もあり、注意深く監視していきたい」と話している。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110408-00000873-yom-sci

 そして7日深夜の福島震度6強地震で、ふたたび東北各地の原発が危機に見舞われました。

東通原発、非常用発電機全て使えず 女川も1台故障(朝日新聞4/8)
 7日深夜に起きた余震では、東北地方の複数の原子力施設で外部電源からの電力供給が途絶した。このうち東北電力東通原発1号機(青森県東通村)では、復旧した外部電源で核燃料の冷却はできているものの、非常用ディーゼル発電機3台がいずれも使えない状態が続いている。 http://www.asahi.com/national/update/0408/TKY201104080592.html

 これらに加えて、六ヶ所村の再処理工場も電源喪失しました。背筋が寒くなりますね。

 今日はこのことに関連して……皆さんは、川本稔さんという方をご存知でしょうか。1920年カリフォルニアで生まれた日系2世で、戦後GHQで働いた後、国策会社だった電源開発の高崎達之助総裁の秘書なども務めました。

 今日紹介するのは、若い日の川本さんが、日本政府の資金で、原発視察のためにアメリカに行ったとき、アルヴィン・ウェインバーグ博士という人から、厳しく注意されたいきさつです。

 これを読むと、日本で『原子力の平和利用』が始まるずっと前から、福島原発事故が起こることは、決まっていたようにさえ思えます。博士はこう言いました。

 「私は広島に落とされた原子爆弾、"Little Boy" の製作に係わった一人です。まさか人間の密集する頭上にこれが落とされるとは思いも寄らなかった。それ以来罪悪感に苛まれ、若しもう一度人間に生まれ変わることがあれば物理学者に絶対ならないと誓っている。それほど後悔している。日本国民に深くお詫びしたい」と言って右手をさしだした。

 そしてウェインバーグ博士は、若い川本氏に熱く語ります。

 日本の原子力発電施設の立地条件の観点から見ると、

    1. 日本は人口が多い。(アメリカの約50%)
    2. その領土は狭い。(アメリカの約5%)
    3. その上 地震多発国である。

 という悪条件が三拍子揃っている。まるでバッターボックスに立つ前に三振がコールされているのと同然である。(like having three strikes called before coming to the batter’s box)
 また原子炉の運転ミスが絶対にないと言い切れない。その上予想外に大きい地震が発生し大量の放射能漏れが発生したとなると、日本の人口が稠密である為、外国と比べ物にならない多くの人身災害が出る可能性が大である。

 このウェインバーグ博士の警告にもかかわらず、日本政府と産業界が原発を推進してきたのは、ご存知のとおりです。

 一つの数式も出てきませんが、ある意味で、知るべきことはすべてこのテキストにあるといっても、過言ではないと思います。ぜひご一読ください。

 全文: http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20110407/1302193002

 テキストをお寄せいただいたKさんに感謝します。ではまた明日まで、お元気で。

この日記の目的

 福島第一原発事故に関する情報を、手短にまとめる試みです。不正確な点がありましたら、どうぞメールなどでご指摘下さい。 editor@chechennews.org (情報提供もお受けしています)
 サイトの内容の引用やリンクはご自由にどうぞ。

福島第一原子力発電所の状況

 1号機の炉心の7割以上が損壊しており、燃料の被覆管のジルコニウムなどから大量の水素が発生、水素爆発の危機が迫っている。格納容器に窒素を注入して水素爆発を防ごうとしているが、効果は不明。

 水素爆発より危険なのは、圧力容器内で溶融した炉心が水と接触して発生する水蒸気爆発。そして、原子炉内部での再臨界の可能性も有識者から指摘され始めた。福島原発の危機的状況は、なお拡大している。 http://newsfromsw19.seesaa.net/article/194947897.html

 「低レベル汚染水の放出」と呼ばれる、事前予告のない放射性物質の海洋投棄が続き、世界的な問題になりつつある。すでに中国、韓国、ロシアの政府とメディアからは批判が続出しており、大気へのベントも含めると、風下の北米圏からの批判が強まるのも時間の問題。

 原子炉にもともと設置されている冷却システムは依然として復旧しておらず、原子炉・使用済燃料プールの温度・水位のほとんどはデータさえ取れていない(または発表されていない)。

     1号機 2号機 3号機 4号機
製造 1971年GE製 1974,GE,東芝 1976,東芝 1978,日立
空中写真
主な出来事 3/12 水素爆発(原子炉建屋) 3/15 水素爆発(圧力抑制プール) 3/14 水素爆発(原子炉建屋) 3/15 水素爆発(使用済燃料貯蔵プール)
原子炉 燃料400体。炉心溶融。燃料棒の一部が露出、損傷の疑い。温度低下、ノズル部で260度(上昇)。放射線量は圧力容器への真水注入を中断、水素爆発防止のため窒素注入 燃料548体。炉心溶融。圧力容器に穴。圧力抑制プール損傷。圧力容器に真水注入中(!)。 燃料548体。炉心溶融。燃料棒の一部が露出、損傷の疑い。圧力容器に真水注入中 燃料なし
燃料の損傷率* 70% 30% 25% -
使用済燃料プール 燃料292体。水位、水温不明。注水中断 燃料587体。水位不明、水温(51度)。注水中 燃料514体。水位、水温不明。注水中 燃料1331体(!)。水位、温度不明。注水中
高濃度汚染水 放射能値1000倍(炉心冷却水との比較)。複水器から貯蔵タンクへ移送中。取水口付近で1万9000ベクレル 放射能値10万倍(同)。複水器から貯蔵タンクへ移送中。取水口付近の汚染水(放射線量は1シーベルト毎時、30万ベクレル)は流出停止。 放射能値1000倍(同)。取水口付近で1万5000ベクレル
その他 ウランとプルトニウムを混在させたMOX燃料を装荷。制御困難に陥りやすく、拡散した場合に毒性が最も高い。
主な出典
*4/7東電発表値を採用
東京新聞連載「福島第一原発の現状」、NewYorkTimes"Status of the Nuclear Reactors at the Fukushima Daiichi Power Plant"など
空中写真はPhotos of the Day - Fukushima Dai-ichi Aerialsより

使用済燃料プールの冷却

 すべて生コン圧送機で注水中。1、3、4号機の温度、水位不明。2号機の温度は不安定。(4/1:58度 4/1:72度 4/2:61度 4/3:50度 4/5:71度 4/6:68度 4/7:51度)

高濃度汚染水

 タービン建屋で見つかった汚染水を、4/4から東電が海水に投棄し始めた。この汚染水のほとんどは、事故後の冷却作業による注水が、原子炉と使用済燃料プールを経由して漏出しているため、冷却すればするほど、放出量も増加する。建屋に溜まっている水だけで6万トンにのぼる。(下の「海水を経由した汚染」の項も参照ください)
 亀裂からの汚染水の流出を止めるための「水ガラス(ケイ酸ナトリウム)」が話題になっているが、全体の状況を考えれば、一部の亀裂を塞いでも、別の場所から漏出するようになるだけだろう。

大気を経由した汚染

参考図

ドイツ気象庁による放射性物質の飛散予想(むこう3日間)。放出源の濃度が分からないため、気候条件のみによる予想です。つまり、この期間のあいだにあり得るベントや爆発によって、放射性物質が放出した場合に、どのように拡散するかをシュミレートしたものなので、この図から直接、危険度を評価することはできません。くわしい説明はこちらを:"with eyes closed." by Kan Yamamoto http://www.witheyesclosed.net/post/4169481471/dwd0329

海水を経由した汚染

 「海はごみ捨て場じゃない」全魚連関係者が東電に抗議。http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY201104060148.html

 集中廃棄物処理施設内の汚染水8000トンの投棄が、8日まで行われます。また、5、6号機地下の汚染水1500トンも、9日までに投棄されます。(東電発表4/7)。

 今後、東北地方太平洋側の海洋は、かつてない規模の放射能汚染が続くでしょう。これについては、下記のフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)が作成した図が参考になります。

 「原発がコストの低い発電手法であり、日本経済を支えている」といった主張は、急速に無意味なものになりつつあります。むしろ、原発は極めてコストの高い災害をもたらし、日本経済にトドメを刺そうとしている」と考える段階に来ているのではないでしょうか。

 政府と東電は「海水の放射能は拡散することで放射線量が減少するので影響は少ない」としているが、実は拡散した核種をプランクトンが吸い込み、それを魚が食べ・・・という形で、食物連鎖のなかで、蓄積されていく。そして高濃度に汚染された魚介類を、私たちが食べることになる。

 今後は、規制値の変更(緩和)にも注意が必要。

参考:汚染水の拡散予測(フランスIRSNによる)
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html

地下水を経由した汚染

 冷温停止中の福島第一原発5、6号機の地下でも、低レベル汚染水をを検出。(4/3)

モニタリングデータ

 首相官邸のサイトより:放射線モニタリングデータ
http://www.kantei.go.jp/saigai/monitoring/index.html

計画停電は何のため?

 今月で計画停電が終了の見込みなので、この項目は過去ログに入れました。
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20110407/1302151867#keikakuteiden

 東電管内で唯一稼働中の柏崎原発の総出力が491万kwですから、もしこれを停止させても、停電は必要ないことになります。原発は必要ありません。

イベント情報

浜岡原発すぐ止めて! 4・10東京―市民集会&デモ 〜切迫する東海地震放射能は首都圏直撃・止めても大余裕の中部電力
http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=1069

2011年4月10日(日) 場所 芝公園 23号地 集合 12時45分

「被災地支援義援金集め&原発いい加減にしろ!」超巨大反原発ロックフェスデモ
http://2011shinsai.info/event20110410?&SESS2115d6d56285529182bbb400251f3bf0=a8a493dc12ff4ef3d024269a0eeddf58

2011年4月10日
14時 高円寺中央公園(南口徒歩1分)集合、大集会!!! 15時〜 超巨大デモ出発! 17時過ぎ〜 高円寺北口広場にて超巨大義援金集め

 ぜひ、ご参加下さい。

重要情報のブックマーク

原子力資料情報室 http://cnic.jp/
流言・デマによるパニックを心配して情報を伏せている方々へ 静岡大学防災総合センター教授 小山真人 http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/etc/riskcom.html
ISEP: 3.11後のエネルギー戦略ペーパー:無計画停電から戦略的エネルギーシフトへ http://www.isep.or.jp/images/press/ISEP_Strategy110404.pdf
日本の加害者化 ーー対岸から火事を眺めて http://newsfromsw19.seesaa.net/article/194703247.html
福島原発震災(38)】フランスIRSNが海洋汚染のシュミレーション結果を発表 http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html
http://sirocco.omp.obs-mip.fr/outils/Symphonie/Produits/Japan/SymphoniePreviJapan.htm
気象庁IAEAの要請をもとにつくったシミュレーション http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/eer_list.html
放射能漏れに対する個人対策(第3版) http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html

(以上のまとめ:大富亮)