なぜ私たちは原発に反対するのか?「障害者」が語る反原発

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今日のトピックス なぜ私たちは原発に反対するのか?「障害者」が語る反原発

 おはようございます。


 ニュースとして書かなければいけないこともいろいろあるのですが、今日はちょっと違った角度から、原発について考えてみたいと思います。

 私たちは、どうして原発に反対するのでしょうか。多くの人は「ガン、白血病になる人が増えるから。子どもは特に影響が大きいから」と答えると思います。私もそうです。

 また「障害児が増えるから」という意見も根強くあると思います。私も、内部被爆関係の本に出てくる、劣化ウラン弾*1の被害と思われる無頭症の子どもの写真を見て「やはり原発に反対しなくては」という思いを強くしました。

 しかし、この考え方には、「障害児は生まれてはならないものだ」という、暗黙の前提があります。あるいは、「障害児は不幸だ」というものです。 

 それを知ることができたのは、堤愛子さんという方の文章を読んだからです。これ、ずいぶん前に読んだ記憶があるのですが、つい最近人から教えられて、ずっと会っていなかった友人に街角で出会ったような気持ちになりました。

 以下の引用は、すべて「「ありのままの生命」を否定する原発に反対」という文章より。

 「いくら許容線量内だから安全だって言われても、これだけ放射線を毎日浴びてれば、おかしくなんねん方がおかしいよ」
‥‥
 「ああ、もしおれにそんな変な子が生まれたら……」
 「どうする?」
 「おれ、たぶん、その子、殺しちゃうだろうな」
 「そうか……。でもさ、冗談じゃなくてだよ、もしかすると、変な子ができたら殺しちゃえって法律が出来るかもしれんぜ。だって、おれたちの子孫にそんなのがボンボンできちゃったら、国としては困っちゃうもの……」

 「うん……」 (「原発ジプシー」(堀江邦夫・現代書館))

 障害者である人から見ると、こういった「不安」を抱く人がいることは、最悪の恐怖です。障害を持って生まれただけで、生命を否定されてしまうからです。そういった危機感のなかで、ご自身が障害者である堤さんは論考します。「障害者は不幸か?」と。

 「生まれてくる子が障害児でもいい、と言ってしまったら、あなたにとって放射能の恐さは何なの?」という声もあった。これにはずいぶん考えさせられた。
 直感的に思うこと---ガンや白血病にかかって寿命を縮めたくない。せっかく人生充実してきて、これからというときに、私自身の人生設計を狂わせたくない。
‥‥
 しかし、因果関係を立証できなくても、放射能は確実に、人類をはじめとする自然の生態系を破壊しつつある。「障害」も、生態系の破壊を示す、危険信号のひとつにはちがいない。
 一方、生物学的にはありうることかどうかわからないが、たとえば多指(いわゆる「奇型」)で生まれてくるはずだった子が、放射能の影響で、五本指(いわゆる「正常」)で生まれたとしても、それはやはり危険信号といえるはずだ。

 少ない燃料から大きな電力。原発は、便利さを求める人間の欲望の、一つの結論かもしれません。人は羽ばたいても飛べないから、飛行機を作りました。私たちは便利さをいつも求めます。
 しかし、それが行き過ぎると、一見不便な「障害」を持った人々が排除されていきます。堤さんはそのことを、こう考えます。

 どんな生物の中にも一定の割合で病気や「障害」が存在しており、それがその種が健康な証拠なのだ。人間の社会は病気や「障害」を極端に嫌うが、人類の存続のためには病気も「障害」も必要不可欠なのだ。
 考えてみれば、人間は歩くことも話すこともできない赤ん坊として生まれ、「老い」とともに身体や頭の働きが衰え、やがて死んでいく。元気なとき、病気のとき等、実にさまざまなからだと心の状態を経験する。そして、大人、子ども、老人、若者、障害者等、様々な個人が集まって、人間社会を形成しているのだ。多様性があるからこそ、免疫や抵抗力が育ち、いたわりや優しさの心も生まれてくるのだと思う。

 障害者を減らそうとすればするほど、いびつな社会が出来上がっていくのかもしれません。「仕事のできない人」をどんどんクビにし、成果主義を押し通すと、結局はその会社全体がだめになってしまうように。

 でもこのことは、原発に反対しなくていい、「障害者」がいくら増えてもいいということでもないと思います。それでいて障害者を排除することのない反原発脱原発の運動にするためには、どう考えたらいいのでしょうか。

 今日はぜひ、堤愛子さんの文章を読んでみてください。世界をまったく逆の方向から発見するような、示唆に富んでいます。

ミュータントの危惧―甘蔗珠恵子『まだ、まにあうのなら』書評(1988年7月)
「ありのままの生命」を否定する原発に反対(1989年3月)
「あたり前」はあたり前か?―「障害者」が生まれるから「原発に反対」は悪質なスリカエ論法だ ! !(1989年12月) 

 それではまた明日まで、お元気で。

イベント情報

 ぜひ、お近くで開かれる集会やデモにご参加ください。次のサイトにイベント情報があります。

http://newsfromsw19.seesaa.net/article/195072595.html
http://datugeninfo.web.fc2.com/

この日記の目的

 福島第一原発事故に関する情報を、手短にまとめる試みです。不正確な点がありましたら、どうぞメールなどでご指摘下さい。 editor@chechennews.org (情報提供もお受けしています)サイトの内容の引用やリンクはご自由にどうぞ。

福島第一原子力発電所の状況

     1号機 2号機 3号機 4号機
製造 1971年GE製 1974,GE,東芝 1976,東芝 1978,日立
空中写真
主な出来事 3/12 水素爆発(原子炉建屋)、圧力容器破損 3/15 水素爆発(圧力抑制プール)、3/16圧力容器破損 3/14 水素爆発(原子炉建屋)、圧力容器破損 3/15 水素爆発(建屋)
原子炉/圧力容器 燃料400体。炉心溶融。底部などが破損 燃料548体。炉心溶融。底部などが破損 燃料548体。炉心溶融。底部などが破損 燃料なし
格納容器 破損 破損 破損 -
使用済燃料プール 使用済燃料292体、新燃料100体。水位、水温不明。 使用済燃料587体、新燃料28体。燃料破損の疑い。水位不明。注水中 使用済燃料514体、新燃料52体。水位、水温不明。注水中 使用済燃料1331体、新燃料204体(!)。燃料棒の一部が破損。注水中。漏水あり。倒壊の懸念
高濃度汚染水 1万7700トン。タービン建屋地下の汚染水は380万ベクレル/cc。核分裂生成物(死の灰)漏出か。複水器から貯蔵タンクへ移送中。 2万5000トン。取水口付近の汚染水はヨウ素131が210ベクレル/cc(法定限度の5300倍)。核分裂生成物漏出か。複水器から貯蔵タンクへ移送中。 2万2000トン。原子炉建屋地下に深さ5mの汚染水。タービン建屋地下の汚染水は390万ベクレル/cc。核分裂生成物漏出か 2万トン。原子炉建屋地下。濃度も事故後に上昇を続けている。
その他 原子炉建屋内の温度40度、湿度94〜99%の蒸し風呂状態。放射線値不明。人間による内部での作業は極めて困難。 ウランとプルトニウムを混在させたMOX燃料を装荷。制御困難に陥りやすく、拡散した場合に毒性が最も高い。 もっとも多量の核燃料がプールに貯蔵されている。余震によるプールの倒壊・放射能の大規模拡散が懸念されている。
主な出典
東京新聞連載「福島第一原発の現状」、NewYorkTimes"Status of the Nuclear Reactors at the Fukushima Daiichi Power Plant"など
空中写真はPhotos of the Day - Fukushima Dai-ichi Aerialsより

 事故全体の規模は、核燃料と死の灰の量から考えて、チェルノブイリの3倍程度と考えられる。  1〜3号機の圧力容器、格納容器とも損壊。冷却水はすべて汚染水となって流出している。燃料は100%溶融して、圧力容器の底にたまっているか、外側の格納容器に落ちていると見られる。(メルトダウン)  4号機は地震当時、定期点検中だったため、もともと炉心に燃料がないが、建屋上部の使用済燃料プールには、大量の燃料が格納されている。燃料の崩壊熱を下げるために外部から注水を続けているが、水素爆発のためにプールは破損しており、冷却水がそのまま放射能汚染水となって漏出している。  また、核分裂の際に発生するヨウ素131が汚染水から検出されていることから、臨界状態が発生しているという意見もある。つまり燃料プールが、原子炉化している可能性がある。  放射性物質の大量の放出が続いている。全体の量は公開されていないようだが、爆発などが起こっておらず、比較的落ち着いていた4月5日の時点でも、一日あたり154兆ベクレルが放出されていたという報道がある。同量が事故発生後24日間放出されていたと仮定すると、3,696兆ベクレルは軽く放出されている。  原子炉にもともと設置されている冷却システムは復旧しなかった。格納容器への注水が即・放射性物質を含む漏水となっている現状を考えると、今後環境に排出される放射性物質の量は相当多くなるであろう。

使用済燃料プールの冷却

 すべて生コン圧送機で注水中。

大気を経由した汚染

参考図

ドイツ気象庁による放射性物質の飛散予想(むこう3日間)。放出源の濃度が分からないため、気候条件のみによる予想です。つまり、この期間のあいだにあり得るベントや爆発によって、放射性物質が放出した場合に、どのように拡散するかをシュミレートしたものなので、この図から直接、危険度を評価することはできません。くわしい説明はこちらを:"with eyes closed." by Kan Yamamoto http://www.witheyesclosed.net/post/4169481471/dwd0329

汚染水・海水を経由した汚染(海洋投棄)

 4月に入り、東電はタービン建屋で見つかった汚染水約1万トンを海洋投棄した。オリンピック規格のプール3杯分にあたる。汚染水のほとんどは、事故後の冷却作業による注水が、炉心と使用済燃料プールを経由して漏出しているため、冷却すればするほど、放出量も増加する。今も建屋に溜まっている水だけで6万トンにのぼる。

[http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819595E0E3E2E2938DE0E3E2E6E0E2E3E39F9FE2E2E2E2:title= また、2号機の取水口付近からの汚染水は、流出総量が推定で520トン、汚染水に含まれる放射性物質の量は4700兆ベクレル(4700テラベクテル)だった。]

「海はごみ捨て場じゃない」全魚連関係者が東電に抗議。http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY201104060148.html

 今後、東北地方太平洋側の海洋は、かつてない規模の放射能汚染が続くと思われる。これについては、下記のフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)が作成した図が参考になる。

 「原発はコストの低い電源であり、日本経済を支えている」といった主張は、急速に無意味なものになりつつある。むしろ、原発は極めてコストの高い災害をもたらし、日本経済にトドメを刺そうとしている」と考える段階に来ているのではないだろうか。

 政府と東電は「海水の放射能は拡散することで放射線量が減少するので影響は少ない」としているが、実は拡散した核種をプランクトンが吸い込み、それを魚が食べ・・・という形で、食物連鎖のなかで、蓄積されていく。そして高濃度に汚染された魚介類を、私たちが食べることになる。

 発電所の沖合い30キロの地点でも、ヨウ素131やセシウム137が観測されている。4月13日の厚労省の発表によれば、福島県いわき市沖・福島第一原発から35キロの地点で採取されたコウナゴから、1万2500ベクレル/kgの放射性セシウムを検出した。食品衛生法での暫定基準値の25倍。

 今後は、規制値の変更(緩和)にも注意が必要。

参考:汚染水の拡散予測(フランスIRSNによる)
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html

地下水を経由した汚染

 2号機周辺に設置された井戸から出た地下水の放射能濃度が、ここ1週間で17倍に増加している。ヨウ素131が1ccあたり610ベクレル。(4/15朝日 http://www.asahi.com/national/update/0414/TKY201104140463.html )

 冷温停止中の福島第一原発5、6号機の地下でも、低レベル汚染水をを検出。(4/3)

モニタリングデータ

 首相官邸のサイトより:放射線モニタリングデータ
http://www.kantei.go.jp/saigai/monitoring/index.html

署名など、あなたにできるアクション

福島の子どもたちを被ばくから守るための署名をしてください。【アクション】[第2弾]子ども20ミリシーベルト基準の即時撤回および被ばく量の最小化のための措置を求める緊急要請  オンライン署名フォーム http://e-shift.org/?p=485
子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク
http://kofdomofukushima.at.webry.info/
Please SIGN to save children in Japan from radiation
http://fukushima.greenaction-japan.com/archives/41
MSCR (Moms to Save Children From Radiation) (日英語)
http://fukushima.greenaction-japan.com/archives/41

参考文献と、重要情報のブックマーク

原子力資料情報室 http://cnic.jp/
福島原発事故情報共同デスク http://2011shinsai.info/
原発震災への対処> 知識を獲得し、汚染される覚悟を持って、楽天的に! 矢ヶ崎克馬(琉球大学名誉教授) http://newsfromsw19.seesaa.net/article/192524452.html?1305530571
Peace Philosophy Centre http://peacephilosophy.blogspot.com/
福島原発震災」をどう見るか―私たちの見解(その1)http://kk-heisa.com/data/2011-03-23_kkkenkai.pdf (『柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会』)
福島原発震災」をどう見るか―私たちの見解(その2) http://kk-heisa.com/data/2011-04-07_kkkenkai2.pdf (〃)
全国の放射能濃度一覧 http://atmc.jp/
小出裕章 (京大助教) 非公式まとめ 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章氏の情報発信 http://hiroakikoide.wordpress.com/
参考資料  マニュアルどおりにならない原発事故対応 〜パニックに陥らず、正確な情報で行動しよう http://d.hatena.ne.jp/chechen/20110325/1301023227
「社会情報リテラシー講義:福島原発事故をめぐる「安全」報道を考える」

    1. 第1回 「科学」「安全」「安心」:問題を整理する http://researchmap.jp/jowricset-111/#_111
    2. 第2回 基準と単位を整理する http://researchmap.jp/jo6nkzpvy-111/#_111
    3. 第3回 数値を確認する http://researchmap.jp/jo7wxgftu-111/#_111
    4. 第4回 事後と事前:安心と安全の境 http://researchmap.jp/joge2by5g-111/#_111
    5. 第5回 比べること:安心と安全の境(2) http://researchmap.jp/joxfh3rfa-111/#_111
    6. 第6回 冷静と混乱のあいだ http://researchmap.jp/joq9cru43-111/#_111
    7. 第7回 「安全」の視点から情報と対応を検討する http://researchmap.jp/jo46bzfzc-111/#_111
    8. ベクレルとシーベルトの変換 http://panflute.p.u-tokyo.ac.jp/~kyo/dose/

<電力の将来>スペインの風力発電、最大の電力源に成長 http://newsfromsw19.seesaa.net/article/195003319.html
流言・デマによるパニックを心配して情報を伏せている方々へ 静岡大学防災総合センター教授 小山真人 http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/etc/riskcom.html
ISEP: 3.11後のエネルギー戦略ペーパー:無計画停電から戦略的エネルギーシフトへ http://www.isep.or.jp/images/press/ISEP_Strategy110404.pdf
日本の加害者化 ーー対岸から火事を眺めて http://newsfromsw19.seesaa.net/article/194703247.html
福島原発震災(38)】フランスIRSNが海洋汚染のシュミレーション結果を発表 http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html
http://sirocco.omp.obs-mip.fr/outils/Symphonie/Produits/Japan/SymphoniePreviJapan.htm
気象庁IAEAの要請をもとにつくったシミュレーション http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/eer_list.html
放射能漏れに対する個人対策(第3版) http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html

読み物系ブックマーク

早尾貴紀:緊急、原発震災関連 http://hayao2.at.webry.info/
弱い文明 http://blog.goo.ne.jp/civil_faible/
よこぜログ http://yokoze.cocolog-nifty.com/blog/
ホンマタイムス http://honmaya.exblog.jp/

まとめ:大富亮

*1:ウランの廃棄物から作られる極めて比重の重い、貫通力の強い砲弾で、弾着地点周辺を放射能で汚染する