「安全な生活」が世界にばらまく放射能──これが私たちの願いだったのか?

 おはようございます。

 「いいニュースと悪いニュース、どっちを先に聞きたいか」と尋ねられた場合、いいニュースの方は「お飾り」であることが多いような気がしますね(笑)。

 さて「いいニュース」から。

放射線で光るプラスチック 京大など開発(京都新聞6/29)

  京都大原子炉実験所の中村秀仁助教放射線物理学)と放射線医学総合研究所帝人化成は29日、高性能で安価な新しい放射線蛍光プラスチックを開発したと発表した。

 中村助教らは、ペットボトルなど広く利用されているポリエステルの一つPET樹脂で放射線が計測できることを発見、計測素子として使えないか研究を進めていた。従来の同等以上の性能で、コストは10分の1に抑えられる。
http://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20110629000078

 というわけで、この秋からはお求めやすい線量計が日本全国、津津浦浦のご家庭に登場するかもしれません。私も、とりあえず一個ほしいです。

 さてお次のニュースです。

放射性物質の汚泥 新たな基準(6月24日NHK)

 東日本を中心に各地の下水処理施設の汚泥などから放射性物質が検出されている問題で、農林水産省放射性セシウムの濃度が1キログラム当たり200ベクレル以下のものについては、流通ルートなどを管理したうえで、肥料として利用できるとする新たな基準をまとめました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110624/t10013755421000.html

 放射性物質を含んだ汚泥を、全国の農地にばらまこうという、農水省のアイデアです。もちろん汚染は作物に移ります。いったいどういう必然性があって、こんなことをしなければならないんだ? さっぱりわかりません。専門家の反論が今後あると思いますが、また紹介します。

 ではもっとすごいニュースをどうぞ:

東北復興にODA活用 水産品買い上げ途上国に供与 3次補正で40〜50億円 (2011/6/25 日本経済新聞)

 政府は東日本大震災からの復興を進めるため、政府開発援助(ODA)を使って被災地の水産加工品を買い上げ、発展途上国を支援する。ODAを被災地の経済復興に活用するのは初めて。世界食糧計画(WFP)に放射能検査を依頼し、日本の食品に輸入規制をかけている途上国にも対応する。
 ODAのうち返済義務のない無償資金協力で被災地から製品を購入し、アジアやアフリカ、中南米の途上国に供与する。宮城県気仙沼市石巻市、女川町、青森県八戸市の漁港は津波で被害を受けた。被災地の製品はサバやサンマの缶詰をはじめとする水産加工品が中心となる。
http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819481E0E6E2E1888DE0E7E2E4E0E2E3E39F9FE2E2E2E2

 東日本沿岸の魚はもう国内では買い手がつかないので、国が買い上げて、それを途上国の人たちの食料にしてもらおうということですね。これも出どころは農水省だと思います。

 つまり復興支援と同時に、買い上げた資金が、そのままODAの援助実績になるというスバラシイ、アイデア。これを考えた人は、「我ながら冴えてるじゃん」と思った、かも。

 かくして放射能に汚染した魚が国境を越え、途上国の人々の食卓にのぼるわけです。

 もしかすると、東日本で操業できなくなった日本の漁船が、南の海でより多くの漁をするための、ひきかえに日本の缶詰が途上国に配られるのだろうか? これは偽善そのものです。

*
 確かに安全はほしい。線量計を手に入れて、少しでも放射能の少ない場所で暮らしたいし、安全な魚を子どもに食べさせてやりたい。しかし、こんなことをするのが──汚染魚を他の国の人々に押し付けるのが、本当に私たちの願いなんだろうか。

 しかも、「原発はこれからも使う。できれば増設もする」という前提で。

 この病んだ、腐った社会をどうしたら変えられるのか、ともに考えていきましょう。

 それではまた明日まで、お元気で。

Index:
今日のトピックスイベント情報この日記の目的福島第一原子力発電所の状況放射線医学総合研究所への質問大気を経由した汚染汚染水・海水を経由した汚染(海洋投棄)地下水を経由した汚染モニタリングデータ署名など、あなたにできるアクション東日本からの避難に関するリンク重要情報のブックマーク読み物系ブックマーク

イベント情報

 ぜひ、お近くで開かれる集会やデモにご参加ください。次のサイトにイベント情報があります。

http://datugeninfo.web.fc2.com/

この日記の目的

 福島第一原発事故に関する情報を、手短にまとめる試みです。不正確な点がありましたら、どうぞメールなどでご指摘下さい。 editor@chechennews.org (情報提供もお受けしています)サイトの内容の引用やリンクはご自由にどうぞ。

福島第一原子力発電所の状況

     1号機 2号機 3号機 4号機
製造 1971年GE製 1974,GE,東芝 1976,東芝 1978,日立
空中写真
主な出来事 3/12 水素爆発(原子炉建屋)、圧力容器破損 3/15 水素爆発(圧力抑制プール)、3/16圧力容器破損 3/14 水素爆発(原子炉建屋)、圧力容器破損 3/15 水素爆発(建屋)
原子炉/圧力容器 燃料400体。炉心溶融。底部破損 燃料548体。炉心溶融。底部破損 燃料548体。炉心溶融。底部破損 燃料なし
格納容器 破損 破損 破損 -
使用済燃料プール 使用済燃料292体、新燃料100体。水位、水温不明。配管から注水冷却 使用済燃料587体、新燃料28体。燃料破損の疑い。熱交換器で冷却中 使用済燃料514体、新燃料52体。水位、水温不明。配管から注水冷却 使用済燃料1331体、新燃料204体(!)。温度90度。燃料棒の一部が破損。仮設ホースで注水冷却。倒壊の懸念
高濃度汚染水 1万6200トン。タービン建屋地下の汚染水は380万ベクレル/cc。核分裂生成物(死の灰)漏出か。複水器から貯蔵タンクへ移送中。 2万4600トン。取水口付近の汚染水はヨウ素131が210ベクレル/cc(法定限度の5300倍)。核分裂生成物漏出か。複水器から貯蔵タンクへ移送中。 2万8100トン。原子炉建屋地下に深さ5mの汚染水。タービン建屋地下の汚染水は390万ベクレル/cc。核分裂生成物漏出か 2万2900トン。原子炉建屋地下。濃度も事故後に上昇を続けている。
その他 ウランとプルトニウムを混在させたMOX燃料を装荷。拡散した場合に毒性が最も高い。 もっとも多量の核燃料がプールに貯蔵されている。余震によるプールの倒壊・放射能の大規模拡散が懸念されている。
主な出典
東京新聞連載「福島第一原発の現状」、NewYorkTimes"Status of the Nuclear Reactors at the Fukushima Daiichi Power Plant"など
空中写真はPhotos of the Day - Fukushima Dai-ichi Aerialsより

 事故全体の規模は、核燃料と死の灰の量から考えて、チェルノブイリの3倍程度と考えられる。  1〜3号機の圧力容器、格納容器とも損壊。冷却水はすべて汚染水となって滞留/流出している。燃料は100%溶融して、圧力容器の底にたまっているか、外側の格納容器に落ちていると見られる(メルトダウン)。  4号機は地震当時、定期点検中だったため、もともと炉心に燃料がないが、建屋上部の使用済燃料プールには、大量の燃料が格納されている。燃料の崩壊熱を下げるために外部から注水を続けているが、水素爆発のためにプールは破損しており、冷却水がそのまま放射能汚染水となって漏出している。  放射性物質の大量の放出が続いている。原子力安全保安院は、4月に事故の深刻度を国際評価尺度の暫定評価で最悪の「レベル7」に引き上げた際は、大気への放出総量を推定37万テラベクレルとしていたが、6月6日に、こっそりと、約2倍にあたる77万テラベクレル(77京Bq)に上ると発表しなおした。  なお、チェルノブイリ事故での放出量は520万ベクレルなので、福島事故で放出された量は、チェルノブイリ事故の14%ということになる。しかしこれは日本政府の発表した数字なので、今後大きく変わる可能性がある。

 爆発などが起こっておらず、比較的落ち着いていた4月5日の時点でも、一日あたり154兆ベクレルが放出されていたという報道がある

 原子炉にもともと設置されている冷却システムは復旧しなかった。格納容器への注水が即・放射性物質を含む漏水となっている現状を考えると、今後環境に排出される放射性物質の量は相当多くなるであろう。

放射線医学総合研究所への質問

「100ミリシーベルトまでは安全です。ただし単位は生涯です」という文書を発表している独立行政法人放射線医学総合研究所に対して、公開質問をしています。まだ返事がありません。過去のやりとりはこちら: http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20110614/

大気を経由した汚染

参考図

ドイツ気象庁による放射性物質の飛散予想(むこう3日間)。放出源の濃度が分からないため、気候条件のみによる予想です。つまり、この期間のあいだにあり得るベントや爆発によって、放射性物質が放出した場合に、どのように拡散するかをシュミレートしたものなので、この図から直接、危険度を評価することはできません。くわしい説明はこちらを:"with eyes closed." by Kan Yamamoto http://www.witheyesclosed.net/post/4169481471/dwd0329

汚染水・海水を経由した汚染(海洋投棄)

 4月に入り、東電はタービン建屋で見つかった汚染水約1万トンを海洋投棄した。オリンピック規格のプール3杯分にあたる。汚染水のほとんどは、事故後の冷却作業による注水が、炉心と使用済燃料プールを経由して漏出しているため、冷却すればするほど、放出量も増加する。今も建屋に溜まっている水だけで6万トンにのぼる。

[http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819595E0E3E2E2938DE0E3E2E6E0E2E3E39F9FE2E2E2E2:title= また、2号機の取水口付近からの汚染水は、流出総量が推定で520トン、汚染水に含まれる放射性物質の量は4700兆ベクレル(4700テラベクテル)だった。]

「海はごみ捨て場じゃない」全魚連関係者が東電に抗議。http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY201104060148.html

 今後、東北地方太平洋側の海洋は、かつてない規模の放射能汚染が続くと思われる。これについては、下記のフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)が作成した図が参考になる。

 「原発はコストの低い電源であり、日本経済を支えている」といった主張は、急速に無意味なものになりつつある。むしろ、原発は極めてコストの高い災害をもたらし、日本経済にトドメを刺そうとしている」と考える段階に来ているのではないだろうか。

 政府と東電は「海水の放射能は拡散することで放射線量が減少するので影響は少ない」としているが、実は拡散した核種をプランクトンが吸い込み、それを魚が食べ・・・という形で、食物連鎖のなかで、蓄積されていく。そして高濃度に汚染された魚介類を、私たちが食べることになる。

 発電所の沖合い30キロの地点でも、ヨウ素131やセシウム137が観測されている。4月13日の厚労省の発表によれば、福島県いわき市沖・福島第一原発から35キロの地点で採取されたコウナゴから、1万2500ベクレル/kgの放射性セシウムを検出した。食品衛生法での暫定基準値の25倍。

 今後は、規制値の変更(緩和)にも注意が必要。

参考:汚染水の拡散予測(フランスIRSNによる)
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html

地下水を経由した汚染

 2号機周辺に設置された井戸から出た地下水の放射能濃度が、ここ1週間で17倍に増加している。ヨウ素131が1ccあたり610ベクレル。(4/15朝日 http://www.asahi.com/national/update/0414/TKY201104140463.html )

 冷温停止中の福島第一原発5、6号機の地下でも、低レベル汚染水をを検出。(4/3)

モニタリングデータ

 首相官邸のサイトより:放射線モニタリングデータ
http://www.kantei.go.jp/saigai/monitoring/index.html

署名など、あなたにできるアクション

福島の子どもたちを被ばくから守るための署名をしてください。【アクション】[第2弾]子ども20ミリシーベルト基準の即時撤回および被ばく量の最小化のための措置を求める緊急要請  オンライン署名フォーム http://e-shift.org/?p=485
子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク
http://kofdomofukushima.at.webry.info/
Please SIGN to save children in Japan from radiation
http://fukushima.greenaction-japan.com/archives/41
MSCR (Moms to Save Children From Radiation) (日英語)
http://fukushima.greenaction-japan.com/archives/41

東日本からの避難に関連するリンク

母子疎開ネットワーク http://hinanshien.blog.shinobi.jp/
オペレーションコドモタチ http://www.soybeans.co.jp/op_kodomo/

参考文献と、重要情報のブックマーク

「僕と核」2011 http://e22.com/atom2/avg.htm
ササユリの咲く頃に。 http://ameblo.jp/kenken4433/
早川由紀夫の火山ブログ http://kipuka.blog70.fc2.com/
原子力資料情報室 http://cnic.jp/
福島原発事故情報共同デスク http://2011shinsai.info/
SAVE CHILD 放射能汚染から子供を守ろう http://savechild.net/
原発震災への対処> 知識を獲得し、汚染される覚悟を持って、楽天的に! 矢ヶ崎克馬(琉球大学名誉教授) http://newsfromsw19.seesaa.net/article/192524452.html?1305530571
Peace Philosophy Centre http://peacephilosophy.blogspot.com/
福島原発震災」をどう見るか―私たちの見解(その1)http://kk-heisa.com/data/2011-03-23_kkkenkai.pdf (『柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会』)
福島原発震災」をどう見るか―私たちの見解(その2) http://kk-heisa.com/data/2011-04-07_kkkenkai2.pdf (〃)
全国の放射能濃度一覧 http://atmc.jp/
小出裕章 (京大助教) 非公式まとめ 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章氏の情報発信 http://hiroakikoide.wordpress.com/
参考資料  マニュアルどおりにならない原発事故対応 〜パニックに陥らず、正確な情報で行動しよう http://d.hatena.ne.jp/chechen/20110325/1301023227
「社会情報リテラシー講義:福島原発事故をめぐる「安全」報道を考える」

    1. 第1回 「科学」「安全」「安心」:問題を整理する http://researchmap.jp/jowricset-111/#_111
    2. 第2回 基準と単位を整理する http://researchmap.jp/jo6nkzpvy-111/#_111
    3. 第3回 数値を確認する http://researchmap.jp/jo7wxgftu-111/#_111
    4. 第4回 事後と事前:安心と安全の境 http://researchmap.jp/joge2by5g-111/#_111
    5. 第5回 比べること:安心と安全の境(2) http://researchmap.jp/joxfh3rfa-111/#_111
    6. 第6回 冷静と混乱のあいだ http://researchmap.jp/joq9cru43-111/#_111
    7. 第7回 「安全」の視点から情報と対応を検討する http://researchmap.jp/jo46bzfzc-111/#_111
    8. ベクレルとシーベルトの変換 http://panflute.p.u-tokyo.ac.jp/~kyo/dose/

<電力の将来>スペインの風力発電、最大の電力源に成長 http://newsfromsw19.seesaa.net/article/195003319.html
流言・デマによるパニックを心配して情報を伏せている方々へ 静岡大学防災総合センター教授 小山真人 http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/etc/riskcom.html
ISEP: 3.11後のエネルギー戦略ペーパー:無計画停電から戦略的エネルギーシフトへ http://www.isep.or.jp/images/press/ISEP_Strategy110404.pdf
日本の加害者化 ーー対岸から火事を眺めて http://newsfromsw19.seesaa.net/article/194703247.html
福島原発震災(38)】フランスIRSNが海洋汚染のシュミレーション結果を発表 http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html
http://sirocco.omp.obs-mip.fr/outils/Symphonie/Produits/Japan/SymphoniePreviJapan.htm
気象庁IAEAの要請をもとにつくったシミュレーション http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/eer_list.html
放射能漏れに対する個人対策(第3版) http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html

読み物系ブックマーク

早尾貴紀:緊急、原発震災関連 http://hayao2.at.webry.info/
弱い文明 http://blog.goo.ne.jp/civil_faible/
よこぜログ http://yokoze.cocolog-nifty.com/blog/
ホンマタイムス http://honmaya.exblog.jp/

まとめ:大富亮