AP:「フォーブス」編集長殺害にチェチェン人関与?

6月16日、ロシア最高検察庁は、米紙「フォーブス」ロシア語版のポール・クレブニコフ編集長が昨年7月に殺害事件に関し、チェチェン独立派のホジアフメド・ヌハーエフ元副首相を起訴したことを明らかにした。クレブニコフ氏はヌハーエフ氏に対するインタビューをもとに「野蛮人との対話」を出版しており、最高検はヌハーエフ氏がこれに強く反発していたとしている。

ロシア系アメリカ人のクレブニコフ氏は41歳で、2004年7月に、フォーブスのモスクワ支局の前で殺害された。最高検のスポークスマンのワシーリー・ルシチェンコ氏は、この殺人事件はチェチェン独立派の元副首相、ホジアフメド・ヌハーエフ氏が依頼したものだと語った。

事件には4人の犯人が関わったとされている。うち2人は警察に拘置されている。

クレブニコフ氏は、銃撃された時に駆けつけたニューズウィークロシア版の記者、アレクサンドル・ゴルデイエフ氏にも犯人の心当たりを言い残さなかった。当時フォーブス誌は、「秘密ビジネスに参加している」ロシアの100人の大富豪を特集していた。

そして、今回取り上げられたのは、クレブニコフ氏の本、「野蛮人との対話」である。ここではヌハーエフ氏をはじめとするチェチェン抵抗勢力がきわめてネガティブに描かれている。この本はヌハーエフ氏へのインタビューを元にして書かれた。

「論理的に考えると、いちばんありそうなのはチェチェン人犯行説です」と、ビジネスコメンテーターのユリア・ラツーニナは言う。その一方で、緊急状況ジャーナリズムセンターのオレグ・パンフィーロフ氏は、殺害にヌハーエフが関わったという見方に懐疑的だ。

チェチェン人を否定的に書いた本はいくらでもあるのに、どうしてクレブニコフなのか?」と。

彼の考えでは、米国はこの事件を解決するよう、ロシアの検察に圧力をかけており、検察はこれをかわすために今回の発表に及んだのだという。

クレブニコフの弟ミカエルは、検察の発表を意外に受け止め、次のようにAPに語った。「おどろきましたね。(ヌハーエフに関わる)本が出た後で、ヌハーエフは兄に対して礼を言っていたくらいですし、否定的な反応などしていなかったんですから。「とても重要なことですが、ここ5年の間に殺された11人か12人のジャーナリストの中で、これが初めて法廷にまで達する事件だとすれば、これまでになく検察がまじめに働いて、堅い証拠をてにいれたことになります」

また、クレブニコフはオリガルヒの一人、ボリス・ベレゾフスキーについての本を書いていることでも知られている。1996年にクレブニコフがベレゾフスキーのプロフィールをフォーブスに書いたとき、ベレゾフスキーはイギリスでこの雑誌に対する訴訟を起こそうとした。

アメリカの保守系シンクタンクヘリテージ財団のモスクワ支部長、エフゲニー・ヴォルク氏は、クレブニコフが、汚職を問題にし、ロシア商業界の秘密の部分を暴露しようとしていたために殺されたという見方をとる。

「クレブニコフは何か微妙な調査報道をしようとしていたと思います。あまりにもいろいろなことが秘密になっているので、ロシアはジャーナリストには危険な国です」と。