荒れ狂う暴力的民族主義

アムネスティ・インターナショナルが5月4日、"Russian Federation: Violent racism out of control"(「ロシア連邦:荒れ狂う暴力的民族主義」)という報告書を発表した。報告書によると、ロシアの民族差別主義団体によって、2005年には少なくとも28名が殺害、366名が襲撃されている。けれども、この数値は実情に比べればごく控え目なものであるとアムネスティは指摘する。公式調査によれば、現在ロシアに存在する約150の「過激主義組織」に関与するロシア人は5000人以上。彼らは排外主義的イデオロギーと暴力によって、彼らにとっての「敵」をロシア国内のみならず地上から一掃しようとしている。


アムネスティ・インターナショナルは、ロンドンを本部とする国際人権団体で、これまでもロシアの人権状況のお粗末さに対して幾度も警告を発してきた。上記の報告書のPDF版は以下のサイトから入手できる。
http://web.amnesty.org/library/pdf/EUR460162006ENGLISH/$File/EUR4601606.pdf

それによると、ロシアの民族差別主義団体の標的となっている人々は、
(1) 留学生
(2) アフリカやアジア、中東、ラテンアメリカからの難民
(3) コーカサスまたは中央アジア出身者
(4) ユダヤ
(5) ロマ
(6) (1)〜(5)の人々に対して同情的なロシア人(ラップやレゲエファンを含む!)
に分類されている。

つまりは誰もが標的になりえるということだが、ロシア当局はおそらく不作為によって上記の人々への―ときには致命的な―攻撃を黙認していると報告書は指摘する。警察はそうした行為を単なる「悪ふざけ」(hooliganism)として取り扱っているからだ。

「こうした暴力的な攻撃は、ロシア社会の広範にわたって不寛容と外国人嫌悪が深く根づいていることのもっとも顕著な証明の一つである」と、アムネスティ・インターナショナルの事務総長アイリーン・カーンは言う。少数民族―特にチェチェン人―に対する人権侵害は、「テロとの戦い」という言葉のもとで際限なく正当化されている。人権団体によって2005年に行われた調査によると、モスクワの地下鉄に乗る際に、非スラブ系の住民はスラブ系の住民と比較して21倍の確率で身分証明書の提示を求められるという。

「国際社会で重要な役割を果たしたいのであれば、ロシア当局はもういい加減に国内の悪化する人権状況を改善し、国際的な義務を果たすべきである・・・(中略)国際人権法にもとづいて、ロシアはあらゆる形態の差別と戦わなければならない」(アイリーン・カーン)