沖縄:日本の中のチェチェン

日本でチェチェン問題を広めることが難しい理由の一つは、チェチェンと私たち自身のつながりが見えにくいことだと思います。ごく最近まで自衛隊を派遣し、現在も武装米兵や米軍需物資の輸送を続けているイラクとは異なり、日本はロシア軍によるチェチェン侵略および占領に直接加担しているわけではありません。

ですから、日本にいる私たちがチェチェンのためにできることというのは、実際にはそれほど多くない。けれども、その認識を無関心や無力感に変える代わりにしなくてはならないこと、それは、チェチェン戦争の沈黙の共犯者であるのを止めること、そして、日本の中に存在するチェチェン問題を知り、自分たち自身の手でその問題を解決することではないでしょうか。

一見遠回りなようですが、そしてまた現に遠回りなのかもしれませんが、チェチェン問題を解決するためには、私たちが日本の中のチェチェンを解放することが必要です。チェチェンは、ロシアという国によって作り出された巨大な密室です。その鍵を開けようとするのであれば、この際、日本という国が作り出した別の密室も公平に解体しておきましょう。沖縄という名の密室を。


国土の1%にも満たない地域で住民の三分の一以上が死亡し、その多くが自国の軍隊に殺された(あるいは見殺しにされた)歴史を持っているという意味で、そして、現地の状況に関する意図的な情報の隠蔽と、一般市民の無知および無関心が現在急速に進行しているという意味で、沖縄を日本のチェチェンと呼ぶことは、それほど的外れな比喩ではないと思います。

米兵による後を絶たない犯罪や事故に対する恐怖。自分たちの土地や海が略奪され、汚染され、侵略戦争を支える基地となっていることへの怒りと罪悪感。在日米軍基地の75%が集中する沖縄では、軍事力で平和や人命が守られるという「理想」論は、残念ながらあまり説得力を持ちません。

沖縄の辺野古では、2004年4月19日から、普天間基地の代替施設建設に反対する住民や市民団体によって、完全非暴力の座り込み阻止運動が続けられています。けれど、このことを含め、沖縄で起こっていることが本土のマスコミに取り上げられることは、ほとんどありません。ちょうどロシアの一般市民がチェチェン戦争に対して思考停止に陥っているように、私たちも沖縄に基地を押しつけている自分の姿を鏡に映すこともなく、国防や改憲を叫ぼうとしてはいないでしょうか。

世界の軍事予算の40%(兵器輸出の47%)を一国で占める、世界最強の軍事国家・米国の安全神話を崩壊させたのは、9.11のときにハイジャック犯が持ち込んだカッターナイフでした。攻められたらどうする?という「現実」的な問いを発する人の多くが、米軍によるイラク侵略を支持しているのはとても奇妙なことです。他人の家を荒らしに出かけている人間が、自分にだけは他人から家を荒らされない権利があると思い込めるのだとすれば、それは現実主義ではなく、一般には単なる勘違いと呼ばれます。

沖縄に関しては、知ろうとさえすれば、ネットでも多くの情報が(日本語で)拾えます。以下にいくつか紹介を。

● ジュゴンの家
辺野古関連リンクの充実した総合サイト)
 http://www47.tok2.com/home/dugong/

● NO BASE HENOKO TOKYO
(東京から辺野古に連帯する若者のサイト)
 http://blog15.fc2.com/henokotokyo/

● グリーンピースジャパン
(米軍基地建設に反対するオンライン署名サイト)
 http://www.greenpeace.or.jp/cyberaction/okinawa/