カディロフ大統領代行指名、多数が歓迎
2007年2月17日 プラハ・ウォッチドッグ
ルスラン・イサーエフ
原文
http://www.watchdog.cz/?show=000000-000002-000001-000183&lang=1
チェチェン大統領(親ロシア派:訳注)アルハノフの辞任とカディロフの後継指名は、予想されていたことだった。結末と、その背後にある一連の動きのおおもとをたどるなら、クレムリンをおいて他にない。チェチェンはモスクワの完全な管理下にありつづけるだろうし、クレムリンの許可がなくてはくしゃみひとつできないことにかわりはない。
チェチェンの市民たちは指導者が変わることへの覚悟はできているし、なにごともなくその任期が終わりはしないということもわかっている。今の状況は、ここ2週間の動きがクライマックスに達したということだ。アルハノフ派とカディロフ派、どちらに軍パイが下ったのか?国中が二つに割れて非難しあった。片や急進派、片やサボタージュ派と。
実際人々は、指導者の交代をそれぞれに受け止めている。高校生のアルビ・イスライロフは、カディロフこそがチェチェンを率いるにふさわしいと考えている。
「ラムザン・カディロフこそが、この国を停滞から引き上げることができるんだよ。ぼくらは待つことにはもう飽きたし、これでようやく前向きに動けるようになってきたんだ。何ヶ月かすれば、グロズヌイは見違えると思うよ。カディロフは政府をましにしたんだ。今彼にこの国を任せるのはいい時だと思うな。カディロフはプーチンを負かしたいと思っているし、プーチンもそれはわかっている。プーチンがカディロフを自分の子どもみたいに叱って見せるのも、只でできるわけじゃないってことさ」
カディロフがチェチェンの若者のほとんどに支持されているのは、彼が政府の中でも社会全体においてもいっそう重要な役割を担ってきているからだろうか?何といってもカディロフは彼を支持する若者自身よりも若いことさえある。
大学五年生のインディラ・ツムソエヴァ:「ラムザンが好きな理由は、彼の若い楽観主義とエネルギーなの。アルハノフには悪いけど、彼っておとぎ話に出てくる滑稽な役回りのピエロみたいでしょ。官僚的な政治家の典型例よね。そういった政治家たちがお互い協力できるならそれでもいいのかもしれないけど、自分たちで代表を選ぶことができるならやっぱりラムザンがいいってこと。若い人たちは彼が好きだし、私の知り合いや学生仲間も大勢ファンクラブに入っているわ」
けれども、カディロフに対する評価はこうしたものだけではない。彼が今やチェチェンのリーダーとなったことを歓迎しない人々もグローズヌイにはいる。タマーラ・アブバカロヴァは、チェチェンが建設的な方向に進んでいるのは必ずしもカディロフのおかげばかりではないという。
タマーラ・アブバカロヴァ:「うちの娘は病院で働いているけど、給料の一部はグローズヌイの再建費用に使われてしまったわ。息子は警察で働いているけど、息子の担当の部署では再建地区に120室のアパートを建てるために給料を引かれてしまったし。要するに、ロシアが壊してきたものを、私たちが自分で再建しなくてはならないってわけ。どうして戦争があって、誰かのアパートが壊されてしまったからといって、うちの娘や息子がお金を出さなきゃいけないの?アルハノフは根っからの善人でまともな人だったわ。もちろん、彼にはモスクワに支援されているカディロフ側からの圧力に耐えることができなかったけど。彼みたいなまともな人がチェチェンにいられなくなってしまうことが悲しいの。もしもチャンスさえあれば、私たちだってとっくの昔にこんなところからは出て行っていたと思うけど」
会社員のスルタンベックの意見も似たり寄ったりだ。
スルタンベック・ザクリエフ:「カディロフにはチェチェンの指導者としてやっていくだけの経験も知性もないね。カディロフがピノチェトのようにやってくれるとは思えない。ピノチェトはチリの経済を発展させてくれたけど、ヤツはまだまだガキさ。でもって、ヤツにとっては、俺たちなんておもちゃの積み木みたいなもんで、どうにでも積み上げられるし、飽きてくれば一蹴りで壊してしまうことだってできる。モスクワからやってくる教育係がカディロフをしつけているわけだけど、ヤツときたら服もまともに着れないし、人前での礼儀だってなっちゃいない」
グローズヌイ出身のプログラマー、ザウールは、カディロフの大統領代行指名を評価している。
ザウール:「今、カディロフにとって重要なのは、これまでの勢いを止めないってことさ。彼にとっては、行動を制限されることそれ自体が我慢ならないだろうね。彼がまだ大統領『代行』に甘んじているってことも、まったくどうでもいいことさ。結局は、一時的とされる状態が一番長く続くんだから。僕は、プーチンがカディロフを正式な大統領に任命すると確信しているね」
地方でジャーナリストとして働いているリズヴァンの意見は、ザウールと正反対だ。
リズヴァン:「カディロフには戦うための目標がないっていうことがとても危険だと思う。彼が大統領になったとする。で、その先は?彼はこれまでだって絶対君主だったじゃないか。それが公式に認められたからといって、すでにすべてを手にしている人間が満足するとでも?大統領になってしまえば、カディロフはもうこれ以上何のために戦うかわからなくなってしまうだろう。カディロフの経歴を考えてみればいい。父親のボディーガードから警護隊長へ、そして副首相、第一副首相ときて、今や大統領代行だ。でもその先には何がある?カディロフが立ち止まったり満足してしまったりしたら、彼は陰気で凡庸なそこらへんにいそうなただの若者になってしまうだろう。カディロフがこれまで成し遂げてきたことは、彼自身の力によるものじゃない。父親の権威と、チェチェンの権力の中枢を押さえておこうとするクレムリンの意向によるもので、カディロフはその中枢なんだ。彼のこれからの悩みは、どんどんと重くなっていく負担にどうやって耐えていくかということになるだろう」