ロ大統領 5年後再出馬に布石 連続3選禁止 安保会議で力温存か

東京新聞 2007年8月23日 朝刊

【モスクワ=稲熊均】来年三月に大統領選を控えるロシアで、大統領の諮問機関・安全保障会議の権限強化に向けた検討が進んでおり、改造後の新たな組織のトップに大統領退任後のプーチン氏が就任するとの観測が出ている。この新組織を足場にプーチン氏が権力を維持し、二〇一二年の大統領選に再出馬するシナリオも政権内で描かれているようだ。

 ロシアでは憲法の規定で大統領の連続三選が禁じられており、プーチン大統領は次期大統領選には出馬できない。

 しかし、80%近い支持率を誇る大統領の続投を求める声は根強く、最近では上院のミロノフ議長を中心に「連続でなく、一期空けた一二年の大統領選出馬なら合憲」との主張が目立っている。


 ただ、ロシアでは大統領の強大な権限が憲法で保障されているため、大統領から一度退けば、情勢次第でそれまでの求心力を失う恐れがある。

 このため、退任後の四年間、プーチン氏が権力を維持するためのポストとして、政府系ガス独占企業ガスプロム社長や、与党「統一ロシア」党首などが検討されてきた。

 今回、浮上した安保会議は、首相、外相、国防相のほか内務相など治安機関のトップが集まる大統領の諮問機関で、ロシアの最高政策決定機関ともいわれる。同会議の実務を取り仕切る書記には多大な権限が委ねられ、エリツィン前政権時代にはレベジ書記が独断でチェチェン独立派トップと会談を行い、内戦を終結させたこともある。

 ただ、あくまでも安保会議の議長は大統領であり、レベジ書記はその後、エリツィン大統領に解任させられた。

 複数のロシア紙によると、現在検討されている安保会議の権限強化案では、同会議を大統領の諮問機関から独立させ、外交と軍事、治安機関を束ねる「安全保障府」のような新組織に改造する。トップはロシアの武力、情報部門を直轄下に置き、大統領に匹敵する権限を得ることになる。現安保会議では先月、イワノフ書記が解任されたばかり。同氏が、プーチン大統領の出身母体・連邦保安局(FSB)中心で進むこうした改造構想に前向きでなく、追われたとの見方もある。