都合のよすぎる逮捕劇

2007年9月2日 ヘラルド・トリビューン

原文
http://www.iht.com/articles/2007/09/02/opinion/edputin.php

 確かに我々はこのニュースを歓迎しなくてはならないだろう。ロシア捜査当局が実際にアンナ・ポリトコフスカヤ記者の暗殺に関与した―さらに米国人記者ポール・フレブニコフ氏やロシア中央銀行副総裁アレクセイ・コズロフ氏の暗殺に関与したであろう―人々を逮捕したというのであれば。

 上記のニュースは、ユーリー・チャイカ、ロシア検事総長の先週の言い分。けれども、どうか我々にこの発言を疑うことを許していただきたい。ロシアの法執行機関は、ウラジーミル・プーチンが支配するクレムリンにあまりにも従順で、正当な法の手続きが機能しているなどと信じ込むことはとてもできそうにないのだから。

 プロのチェチェン人スナイパーや、内職に精を出す警察官、性質の悪い情報部員が殺害に関与したというチャイカの説明は、確かに真実なのかもしれない。嘆かわしいことに、ロシアにはこの手の連中がはびこっているし、そうした雇われ連中がポリトコフスカヤを暗殺したという説を、ロシア人たちも進んで受け入れようとしている。ところが、チャイカは、事件の背後で糸を引いているのは、ロシアを混乱に陥れ、プーチンに対する恨みを晴らそうとしている亡命ロシア人であると仄めかしている。これは、ポリトコフスカヤが暗殺された昨年の10月7日からわずか3日後にプーチン自身が述べていたことと一致する。何という偶然だろう。

 チャイカの説明から最初に浮かび上がる二人の人物は、政商ボリス・ベレゾフスキーと、チェチェン独立派指導者のアフマッド・ザカーエフである。二人は、ともにロンドンに亡命しており、プーチンに極めて批判的で、したがってクレムリンのお尋ね者だ。

 とはいえ、黒幕が海外にいるとプーチンが仄めかしたことは、欧米ではあまり受けがよくなかった。古き悪き時代、何であれ物事が破綻し出したときに、欧米に責任を転嫁するのはソ連の常套手段だった。タス紙の見出しはこのように煽られたものだった。「自分たちだけうまい汁を吸おうとしているのは誰か?」。欧米の指導者たちは、ポリトコフスカヤを暗殺した真犯人を見つけ、反体制派が次々と暗殺されるのを食い止めるために、プーチンに釘を刺し始めた。昨年11月にロンドンでアレクサンドル・リトビネンコがポロニウムを盛られて変死したこともあり、そうした要請は一段と強まった。

 そして、今、突如として、最も不名誉な3つの暗殺事件が解決したという。事件の首謀者は、まさにプーチンが当初から疑っていた人物で、警察は例のごとくチェチェン人と腐った警官たちを―そして信憑性を増すためにスパイもおまけに―逮捕した。もっとも、チャイカの発表が真実であるという可能性もなくはない。共産主義後のロシアには確かに奇妙なことが起こるものだから。もしそうであるなら、チャイカ検事総長には、ぜひとも公正な裁判で説得力のある証拠を示し、他の未解決の政治的暗殺事件についても同様の職務精神を発揮していただきたいものである。