抗議なきデモ

ロバート・コアルソン

2007年10月12日(ラジオ・リバティ)

 先月初頭、ベスラン事件3周年の追悼デモに参加した13人が、逮捕・起訴された。今月初頭、1万人以上の親クレムリンの若者たちが、ウラジーミル・プーチン大統領の55歳の誕生日を祝うために、モスクワ中心に集まった。二つの事例は、ロシア政府が、間近に迫る選挙に備えて、ダブルスタンダードでデモに臨んでいることを、はっきりと示している。

 クレムリンに非友好的なデモの取り締まりは、ここ一年以上続いており、今やすべての反対派を社会的に抹殺するためのプーチン政権の政策の重要な一環となっている。9月30日、NGO弁護団は、政府がデモの権利を規制していることを批判する声明を発表した。弁護団によると、2007年にはほぼすべての反体制デモが禁止または解散させられており、政府は、抗議活動といえば市民が暴力と逮捕を連想するよう、巧妙に人々の意識を誘導しているという。9月末、ロシアの国営テレビは、反対派のデモ参加者たちが警察に弾圧されるのはデモ参加者が警察を挑発しているからであると主張する「特報」をゴールデンアワーに放映した。

孤立を深める反体制派

 さらに、弁護団は、デモ参加者への罰が、いっそう重くなってきていることを強調した。過去には行政罰が主だったが、今やひとたび拘束されれば、被告の権利を無視する略式の法的手続きによって、懲役一五日の刑が下されることも珍しくない。
 声明文によると、被拘禁者が弁護士や証言者を呼ぶことを許されるケースは稀であり、判決はもっぱら警察の報告書によって下される。NGOの活動家は、「コメルサント」紙に対して、モスクワは郊外でのみ反対デモを許可する政策を取っていると語り、地方都市もモスクワの例に倣っていると指摘した。
 活動家によると、モスクワ当局が許可している反対デモは一つだけ―通年の組織化されたデモ―であり、集会も郊外でしか許可しないという。グローザ運動の活動家のアレクセイ・コズロフが「ガゼータ」に語ったところによると、「ロシアの航空会社であるアエロフロートを始めとする国営運送会社は、ロシア国内の活動家の動きについて、定期的に警察に情報を提供している」という。
 「駅や空港で、こうしたリストに載っている人々は警察に逮捕され、尋問される」とコズロフは述べた。弁護団の専門家ナタリア・ズブヤギナは、「コメルサント」紙に対して、親クレムリン組織であれば、注目度の高い場所で数倍の規模のデモを申請しても許可されること、当局が反対組織に許可を与えない口実としてこうした許可を利用していることを述べた。

反対派のゲリラ化

 従来のような集会やデモを行なうことがいっそう難しくなってきているため、反対派は悪くすれば浅はかさを印象づけるゲリラ戦術を取らざるをえなくなっている。「デモとピケの禁止を受けて[右派連合は]市民的抗議の新技術を開拓した」と、右派連合運動のアントン・バコフ代表は、10月11日、 gazeta.ruに語った。「我々は行動の拠点を、店舗や公共交通手段に移しつつある」
 本日、わずか数百名の右派連合支持者たちが、食料品の値上がりへの関心を喚起するための行動の一環として、統一ロシアの支持者であり下院副議長であるウラジーミル・グルズデフが所有するモスクワのスーパーマーケットチェーンに集まった。当然のことながら、当局にとって、民間企業や公共交通の場で計画されるこの種の行為に対する取り締まりを正当化するのは、通常のデモに対する取り締まりを正当化するよりもはるかに容易である。
 けれども、今日のロシアではすべてのデモが平等に扱われるわけではない。親クレムリン組織―特に若者が組織するナーシや親衛隊、Mestnye―は、ロシア中どこででも問題なくデモを開催できる。反対派リーダーのガルリ・カスパロフとミハイル・カシヤノフは、公式の場に姿を見せようとすると、決まって破壊的なピケとデモに直面する。
 先月、ナーシのピケ参加者は、カシヤノフが演説をする予定だったモスクワ郊外への入口を封鎖した。10月11日、ロストフ・ナ・ドヌーのナーシの活動家は、右派連合の政治委員のボリス・ネムツォフの出版記念会でデモを行ない、ネムツォフの「海外後援者」を装って参加者に「ドル」をばらまいた。
 公共のデモに対する取り締まりは、間近に迫った選挙に向けて虚偽の同意を捏造するために、当局がロシアの政治的環境を厳重に管理していることを、最も見えやすい形で露骨に示す例の一つである。さらに、それは、警察や裁判所が、プーチン政権の政治的目的を達成するという業務に完全に従属していることを示してもいる。
 レバダ・センターによる最新の世論調査によると、統一ロシアの支持率は約68%に上る。10月11日、プーチンはロシア全土の地方代表と非公式の会合を持った。統一ロシアの地すべり的勝利を製造する手続きが全速力で進んでいる。

原文: http://www.rferl.org/featuresarticle/2007/10/8a60830c-d57b-4c06-bdf0-6d477fb7d03e.html