焦るときほど、冷静に

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今日のトピックス 焦るときほど、冷静に

 おはようございます。ここ数日、危険な状態が伝えられてきた福島原発1号機ですが、炉心の損壊は東電発表でも70%におよび、もっとも危険な状態にあると考えられています。6日夜から始まった窒素の注入によって格納容器の水素爆発を止めようとしていますが、炉の状況は最終段階に達しているように思われます。

 これとの関係は分かりませんが、7日午前の記者会見で、官房長官は避難指示範囲の30キロ圏への拡大を検討していると発表しました。おそらく、決定済みの事項を、ワンクッション置いて発表しているのでしょう。

 また、インターネット上での「流言飛語」を、プロバイダーのレベルで削除せよという要請文が、総務省から出ました。しかしこの要請には、何が「流言飛語」なのかが定義されていません。

特に、インターネット上の流言飛語については、関係省庁が連携し、これらの実態を把握した上で、インターネット利用者に対して注意喚起を行うとともに、サイト管理者等に対して、法令や公序良俗に反する情報の自主的な削除を含め、適切な対応をとることを要請し、正確な情報が利用者に提供されるよう努める。 http://www.soumu.go.jp/main_content/000110048.pdf

 新聞情報は毎日縮小していて、テレビでは「放射能は体にいい」などという科学者が幅をきかせています。私たちは少しづつ、しかし確実に情報から遠ざけられているようです。頼みの綱のネット上の情報が、「流言飛語」に指定され、勝手に消されていく可能性もあります。一連の動きに、胸がざわざわとする思いです。


 「焦るときほど、冷静に」という言葉があります。こんな時だからこそ、「安全」というものが何なのか、考えてみませんか。東京大学影浦峡さんが、「社会情報リテラシー講義:福島原発事故をめぐる「安全」報道を考える」という講義を開始しました。

 不安を抱えたまま情報を見ると、安全性については諸説あるし、さらに安全だと言われている背景の科学的な知見についても諸説あって不安は解消されないし、議論が「安全」という社会的なレベルのものなのか「科学的」知見についてのものなのかも混乱してるし、さらには、誰にとっても変わらないはずの基本的な情報についても、なかなか信頼できず、懐疑的・猜疑的になってしまいます。

 この講義では、こうした状況を踏まえ、特に社会的な見解や判断、合意をめぐって私たちはどう情報を読み取ることができるか、考えて行きます。

 「安心できる情報」を誰かから与えてもらうのではなく、まず今ある情報を読み解く力を、一人一人が持つことが、必要なのだと思います。大変ですが、このような時なので、勉強するチャンスだと思って、ぜひお読みください。私ももう一度読みます。

第1回 「科学」「安全」「安心」:問題を整理する

第2回 基準と単位を整理する

ベクレルとシーベルトの変換

 書きたいことは尽きませんが、今日はこれにて。また明日まで、お元気で。

この日記の目的

 福島第一原発事故に関する情報を、手短にまとめる試みです。不正確な点がありましたら、どうぞメールなどでご指摘下さい。 editor@chechennews.org (情報提供もお受けしています)
 サイトの内容の引用やリンクはご自由にどうぞ。

福島第一原子力発電所の状況

 1号機の炉心の7割以上が損壊しており、燃料の被覆管のジルコニウムなどから大量の水素が発生、水素爆発の危機が迫っている。現地では格納容器に窒素を注入して水素爆発を防ごうとしているが、効果は不明。

 炉心溶融に続き、再臨界の可能性も有識者から指摘され始めた。福島原発の危機的状況は、なお拡大している。

 「低レベル汚染水の放出」と呼ばれる、事前予告のない放射性物質の海洋投棄が続き、世界的な問題になりつつある。すでに中国、韓国、ロシアの政府とメディアからは批判が続出しており、大気へのベントも含めると、風下の北米圏からの批判が強まるのも時間の問題。

 原子炉にもともと設置されている冷却システムは依然として復旧しておらず、原子炉・使用済燃料プールの温度・水位のほとんどはデータさえ取れていない(または発表されていない)。

     1号機 2号機 3号機 4号機
製造 1971年GE製 1974,GE,東芝 1976,東芝 1978,日立
空中写真
主な出来事 3/12 水素爆発(原子炉建屋) 3/15 水素爆発(圧力抑制プール) 3/14 水素爆発(原子炉建屋) 3/15 水素爆発(使用済燃料貯蔵プール)
原子炉 燃料400体。炉心溶融。燃料棒の一部が露出、損傷の疑い。温度低下、ノズル部で223度(横ばい)。圧力容器への真水注入を中断、格納容器に水素爆発防止のため窒素注入 燃料548体。炉心溶融。圧力容器に穴。圧力抑制プール損傷。圧力容器に真水注入中(!)。 燃料548体。炉心溶融。燃料棒の一部が露出、損傷の疑い。圧力容器に真水注入中 燃料なし
燃料の損傷率* 70% 30% 25% -
使用済燃料プール 燃料292体。水位、水温不明。注水中断 燃料587体。水位不明、水温(51度)。注水中 燃料514体。水位、水温不明。注水中 燃料1331体(!)。水位、温度不明。注水中
高濃度汚染水 放射能値1000倍(炉心冷却水との比較)。複水器から貯蔵タンクへ移送中。取水口付近で1万9000ベクレル 放射能値10万倍(同)。複水器から貯蔵タンクへ移送中。取水口付近の汚染水(放射線量は1シーベルト毎時、30万ベクレル)は流出停止。 放射能値1000倍(同)。取水口付近で1万5000ベクレル
その他 ウランとプルトニウムを混在させたMOX燃料を装荷。制御困難に陥りやすく、拡散した場合に毒性が最も高い。
主な出典
*4/7東電発表値を採用
東京新聞連載「福島第一原発の現状」、NewYorkTimes"Status of the Nuclear Reactors at the Fukushima Daiichi Power Plant"など
空中写真はPhotos of the Day - Fukushima Dai-ichi Aerialsより

使用済燃料プールの冷却

 すべて生コン圧送機で注水中。1、3、4号機の温度、水位不明。2号機の温度は不安定。(4/1:58度 4/1:72度 4/2:61度 4/3:50度 4/5:71度 4/6:68度 4/7:51度)

高濃度汚染水

 タービン建屋で見つかった汚染水を、4/4から東電が海水に投棄し始めた。この汚染水のほとんどは、事故後の冷却作業による注水が、原子炉と使用済燃料プールを経由して漏出しているため、冷却すればするほど、放出量も増加する。建屋に溜まっている水だけで6万トンにのぼる。(下の「海水を経由した汚染」の項も参照ください)
 亀裂からの汚染水の流出を止めるための「水ガラス(ケイ酸ナトリウム)」が話題になっているが、全体の状況を考えれば、一部の亀裂を塞いでも、別の場所から漏出するようになるだけだろう。

大気を経由した汚染

参考図

ドイツ気象庁による放射性物質の飛散予想(むこう3日間)。放出源の濃度が分からないため、気候条件のみによる予想です。つまり、この期間のあいだにあり得るベントや爆発によって、放射性物質が放出した場合に、どのように拡散するかをシュミレートしたものなので、この図から直接、危険度を評価することはできません。くわしい説明はこちらを:"with eyes closed." by Kan Yamamoto http://www.witheyesclosed.net/post/4169481471/dwd0329

海水を経由した汚染

 「海はごみ捨て場じゃない」全魚連関係者が東電に抗議。http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY201104060148.html

 集中廃棄物処理施設内の汚染水8000トンの投棄が、8日まで行われます。また、5、6号機地下の汚染水1500トンも、9日までに投棄されます。(東電発表4/7)。

 今後、東北地方太平洋側の海洋は、かつてない規模の放射能汚染が続くでしょう。これについては、下記のフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)が作成した図が参考になります。

 「原発はコストの低い発電方法であり、日本経済を支えている」といった主張は、急速に無意味なものになりつつあります。むしろ、原発は極めてコストの高い災害をもたらし、日本経済にトドメを刺そうとしている」と考える段階に来ているのではないでしょうか。

 政府と東電は「海水の放射能は拡散することで放射線量が減少するので影響は少ない」としているが、実は拡散した核種をプランクトンが吸い込み、それを魚が食べ・・・という形で、食物連鎖のなかで、蓄積されていく。そして高濃度に汚染された魚介類を、私たちが食べることになる。

 今後は、規制値の変更(緩和)にも注意が必要。

参考:汚染水の拡散予測(フランスIRSNによる)
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html

地下水を経由した汚染

 冷温停止中の福島第一原発5、6号機の地下でも、低レベル汚染水をを検出。(4/3)

モニタリングデータ

 首相官邸のサイトより:放射線モニタリングデータ
http://www.kantei.go.jp/saigai/monitoring/index.html

計画停電は何のため?

 今月で計画停電が終了の見込みなので、この項目は過去ログに入れました。
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20110407/1302151867#keikakuteiden

 東電管内で唯一稼働中の柏崎原発の総出力が491万kwですから、もしこれを停止させても、停電は必要ないことになります。原発は必要ありません。

イベント情報

浜岡原発すぐ止めて! 4・10東京―市民集会&デモ 〜切迫する東海地震放射能は首都圏直撃・止めても大余裕の中部電力
http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=1069

2011年4月10日(日) 場所 芝公園 23号地 集合 12時45分

「被災地支援義援金集め&原発いい加減にしろ!」超巨大反原発ロックフェスデモ
http://2011shinsai.info/event20110410?&SESS2115d6d56285529182bbb400251f3bf0=a8a493dc12ff4ef3d024269a0eeddf58

2011年4月10日
14時 高円寺中央公園(南口徒歩1分)集合、大集会!!! 15時〜 超巨大デモ出発! 17時過ぎ〜 高円寺北口広場にて超巨大義援金集め

 ぜひ、ご参加下さい。

重要情報のブックマーク

原子力資料情報室 http://cnic.jp/
ISEP: 3.11後のエネルギー戦略ペーパー:無計画停電から戦略的エネルギーシフトへ http://www.isep.or.jp/images/press/ISEP_Strategy110404.pdf
日本の加害者化 ーー対岸から火事を眺めて http://newsfromsw19.seesaa.net/article/194703247.html
福島原発震災(38)】フランスIRSNが海洋汚染のシュミレーション結果を発表 http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html
http://sirocco.omp.obs-mip.fr/outils/Symphonie/Produits/Japan/SymphoniePreviJapan.htm
気象庁IAEAの要請をもとにつくったシミュレーション http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/eer_list.html
放射能漏れに対する個人対策(第3版) http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html

(以上のまとめ:大富亮)