原子力村の懲りない面々

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今日のトピックスこの日記の目的福島第一原子力発電所の状況使用済燃料プールの冷却大気を経由した汚染汚染水・海水を経由した汚染(海洋投棄)地下水を経由した汚染モニタリングデータ計画停電は何のため?イベント情報重要情報のブックマーク

今日のトピックス 原子力村の懲りない面々

 おはようございます。

 チェルノブイリ級の事故が首都から200キロほどのところで発生したにもかかわらず、「これからも原子力発電を推進しよう」と考える人がいるのは、ちょっとした驚きです。

 福島事故をめぐる補償額は数兆円に達すると言われますが、それは電気代や税金として、私たちが払うことになります。それもまた、原子力発電のコストです。(原発賠償で電気料金引き上げも http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110404/219294/?ST=money&rt=nocnt )

 さてそんな今、さらに原子力発電を進めようとしている人は誰なのでしょうか? 今日はその一部を紹介してみます。普通なら「ありえないでしょ」と思うようなことが、実は進行中です。油断はできません。

東電社長「柏崎刈羽3号機、年内に…」地元反発(4月14日 読売)
 東京電力清水正孝社長は13日の記者会見で、2007年の新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原子力発電所新潟県柏崎市刈羽村、全7基)で今も停止中の2〜4号機のうち、3号機について、「運転再開に向けてできるだけ早く、年内には手続きに入りたい」と発言した。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110414-OYT1T00952.htm

東芝社長:海外の原発受注遅れも(4/14毎日)
 東芝は15年度までに国内外で39基の原子力発電設備を受注することを目指している。佐々木社長は、東京電力福島第1原発の事故がこうした目標に与える影響について「1兆円達成がいつになるかは今はわからない。39基の受注も遅れると思う」との認識を示した。

 ただし、「原子力二酸化炭素排出量の削減を解決する有力な選択肢であることは変わりがない」とも強調。東電と協力して進めているトルコや米国などへの原発輸出も「やめるとは言われていないし、東電以外にもパートナーになりたいという電力会社はある」と話し、交渉継続に期待を示した。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20110415k0000m020153000c.html

福島第1原発原子力委員長、推進政策は変えず(毎日、4月12日)
 福島第1原発の事故がレベル7に引き上げられたことについて、原子力政策を推進する内閣府原子力委員会近藤駿介委員長は12日の定例会後、記者団に対し「大規模な放射性物質の放出を起こしたことを深刻に受け止めている」と話した。その上で「絶えずリスクを下げる努力をしながら(推進する)政策を進めていく」と述べた。
http://mainichi.jp/select/science/news/20110412k0000e040083000c.html

国民全体の罪だ…石原知事「天罰」発言(3/26 読売新聞)
 石原知事:「水力、火力では限界もある。原発を欠いては日本経済は成り立たない」と強調し、「依然として原発推進論者だ」と持論を展開した。 http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110326-OYT1T00223.htm?from=nwla

 電力会社、電機メーカー、内閣、そして石原氏。私たちをさらに崖っぷちに追い込む人々と言っていいでしょう。ちなみに石原氏は都知事選の公開討論会で上の「依然として…」発言を指摘され、「そんなこと言ってない」と言い返しました。どこまでひどいんだ。

 さて、原発問題が気になる人は、できるだけデモに参加しましょう。各地で行われますが、東京では渋谷だそうです。関西地方も活発です。イベント情報をご覧ください。重複もありますが、こちらのサイトもかなり網羅しています。ロンドンSW19より: http://newsfromsw19.seesaa.net/article/195072595.html?1302831705

 それではまた明日まで、お元気で。

この日記の目的

 福島第一原発事故に関する情報を、手短にまとめる試みです。不正確な点がありましたら、どうぞメールなどでご指摘下さい。 editor@chechennews.org (情報提供もお受けしています)
 サイトの内容の引用やリンクはご自由にどうぞ。

福島第一原子力発電所の状況

 3号機炉心上部で温度上昇。12日:170度から、14日:250度。注水の増強が必要。(4/14東電発表)

 1号機の炉心の7割以上が損壊しており、燃料の被覆管のジルコニウムなどから大量の水素が発生、水素爆発の危機が迫っている。

 さらに危険なのは、圧力容器内で溶融した炉心が水と接触して発生する水蒸気爆発である。そして、原子炉内部での再臨界の可能性も有識者から指摘され始めた。福島原発の危機的状況は、なお拡大している。

 下表の通り、タービン建屋地下に高濃度の汚染水が流出した事実は、格納容器の破損を意味している。「柏崎刈羽原発の閉鎖を科学者・技術者の会」によれば、圧力容器の底部に溶融した燃料が到達し、底部の制御棒挿入部を壊して、吹き出している可能性が高い。

 「低レベル汚染水の放出」と呼ばれる、事前予告のない放射性物質の海洋投棄が続き、世界的な問題になりつつある。すでに中国、韓国、ロシアの政府とメディアからは批判が続出しており、大気へのベントも含めると、風下の北米圏からの批判が強まるのも時間の問題。

 原子炉にもともと設置されている冷却システムが復旧する可能性は極めて低い。格納容器への注水が即・放射性物質を含む漏水となっている現状を考えると、今後環境に排出される放射性物質の量は相当多くなるであろう。

     1号機 2号機 3号機 4号機
製造 1971年GE製 1974,GE,東芝 1976,東芝 1978,日立
空中写真
主な出来事 3/12 水素爆発(原子炉建屋) 3/15 水素爆発(圧力抑制プール) 3/14 水素爆発(原子炉建屋) 3/15 水素爆発(使用済燃料貯蔵プール)
原子炉 燃料400体。炉心溶融。圧力容器破損の疑い。温度低下、ノズル部で260度(上昇)。圧力容器への真水注入を中断、水素爆発防止のため窒素注入 燃料548体。炉心溶融。圧力容器破損。圧力抑制プール破損。真水注入中(!)。 温度急上昇中。燃料548体。炉心溶融。圧力容器破損の疑い。真水注入中 燃料なし
燃料の損傷率* 70% 30% 25% -
使用済燃料プール 燃料292体。水位、水温不明。注水中断 燃料587体。水位不明、水温(51度)。注水中 燃料514体。水位、水温不明。注水中 燃料1331体(!)。燃料棒の一部が破損。通常の100倍濃度の放射能汚染水あり。水温90度前後。注水中
高濃度汚染水 タービン建屋地下の汚染水は380万ベクレル/cc。核分裂生成物(死の灰)漏出か。複水器から貯蔵タンクへ移送中。 取水口付近の汚染水は1sv/h強の汚染(10分ほど急性障害が生じる)。核分裂生成物漏出か。複水器から貯蔵タンクへ移送中。 タービン建屋地下の汚染水は390万ベクレル/cc。核分裂生成物漏出か
その他 ウランとプルトニウムを混在させたMOX燃料を装荷。制御困難に陥りやすく、拡散した場合に毒性が最も高い。
主な出典
*4/7東電発表値を採用
東京新聞連載「福島第一原発の現状」、NewYorkTimes"Status of the Nuclear Reactors at the Fukushima Daiichi Power Plant"など
空中写真はPhotos of the Day - Fukushima Dai-ichi Aerialsより

使用済燃料プールの冷却

 すべて生コン圧送機で注水中。1、3、4号機の温度、水位不明。2号機の温度は不安定。(4/1:58度 4/1:72度 4/2:61度 4/3:50度 4/5:71度 4/6:68度 4/7:51度)

大気を経由した汚染

参考図

ドイツ気象庁による放射性物質の飛散予想(むこう3日間)。放出源の濃度が分からないため、気候条件のみによる予想です。つまり、この期間のあいだにあり得るベントや爆発によって、放射性物質が放出した場合に、どのように拡散するかをシュミレートしたものなので、この図から直接、危険度を評価することはできません。くわしい説明はこちらを:"with eyes closed." by Kan Yamamoto http://www.witheyesclosed.net/post/4169481471/dwd0329

汚染水・海水を経由した汚染(海洋投棄)

 4月に入り、東電はタービン建屋で見つかった汚染水約1万トンを海洋投棄した。オリンピック規格の辰巳国際水泳場メインプール3杯分にあたる。汚染水のほとんどは、事故後の冷却作業による注水が、原子炉と使用済燃料プールを経由して漏出しているため、冷却すればするほど、放出量も増加する。今も建屋に溜まっている水だけで6万トンにのぼる。

「海はごみ捨て場じゃない」全魚連関係者が東電に抗議。http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY201104060148.html

 今後、東北地方太平洋側の海洋は、かつてない規模の放射能汚染が続くと思われる。これについては、下記のフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)が作成した図が参考になる。

 「原発はコストの低い電源であり、日本経済を支えている」といった主張は、急速に無意味なものになりつつある。むしろ、原発は極めてコストの高い災害をもたらし、日本経済にトドメを刺そうとしている」と考える段階に来ているのではないだろうか。

 政府と東電は「海水の放射能は拡散することで放射線量が減少するので影響は少ない」としているが、実は拡散した核種をプランクトンが吸い込み、それを魚が食べ・・・という形で、食物連鎖のなかで、蓄積されていく。そして高濃度に汚染された魚介類を、私たちが食べることになる。

 4月13日の厚労省の発表によれば、福島県いわき市沖・福島第一原発から35キロの地点で採取されたコウナゴから、1万2500ベクレルの放射性セシウムを検出した。食品衛生法での暫定基準値の25倍。

 今後は、規制値の変更(緩和)にも注意が必要。

参考:汚染水の拡散予測(フランスIRSNによる)
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html

地下水を経由した汚染

 2号機周辺に設置された井戸から出た地下水の放射能濃度が、ここ1週間で17倍に増加している。ヨウ素131が1ccあたり610ベクレル。(4/15朝日 http://www.asahi.com/national/update/0414/TKY201104140463.html )

 冷温停止中の福島第一原発5、6号機の地下でも、低レベル汚染水をを検出。(4/3)

モニタリングデータ

 首相官邸のサイトより:放射線モニタリングデータ
http://www.kantei.go.jp/saigai/monitoring/index.html

計画停電は何のため?

 今月で計画停電が終了の見込みなので、この項目は過去ログに入れました。
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20110407/1302151867#keikakuteiden

 東電管内で唯一稼働中の柏崎原発の総出力が491万kwですから、もしこれを停止させても、停電は必要ないことになります。原発は必要ありません。

イベント情報

 ぜひ、ご参加下さい。

4月16日(土)

●大阪「緊急4.16原発いらん!関西行動」
http://chikyuza.net/n/archives/8262
●東京「4.16脱原発社会を作ろう!デモ」
http://civilopinions.main.jp/2011/04/414416.html

4月17日(日)

●京都 原発もうムリ!4.17鴨川・大風呂敷
4月17日(日)午前11時〜日没(その後、人がいるかぎりずっと)
京都・三条河川敷にて http://genpatsumoumuri.seesaa.net/

4月23日〜5月6日

●東京『特集上映 25年目のチェルノブイリ
http://www.mmjp.or.jp/pole2/
 ポレポレ東中野では、チェルノブイリ原発事故の発生した4月26日に毎年、原発に関する作品の企画上映を開催しています。単純な賛否ではなく、そもそも原子力発電とは何なのか、なぜ原発を必要とするのか、その背景を見据えることから始めようと、国内外の作品を問わず、劇映画、ドキュメンタリー、原発の建設記録を追った映画なども上映してきました。事故から25年目の今回は区切りの年として規模を拡大し、二週間の特集上映を企画しました。

4月24日(日)

●東京 くり返すな!原発震災 つくろう!脱原発社会 集会とデモ
http://www.peace-forum.com/gensuikin/katsudou/110424yotei.html

●広島「原発なしで暮らしたい100万人アクション in ヒロシマ
http://blogs.yahoo.co.jp/mxx941/3510988.html

4月29日(金)

●東京「終焉に向かう原子力」第11回 チェルノブイリ原発事故25周年
東海地震の前に浜岡原発を停止させよう 福島原発震災をくりかえすな
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20110408/1302268362

参考文献と、重要情報のブックマーク

原子力資料情報室 http://cnic.jp/
福島原発震災」をどう見るか―私たちの見解(その1)http://kk-heisa.com/data/2011-03-23_kkkenkai.pdf (『柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会』)
福島原発震災」をどう見るか―私たちの見解(その2) http://kk-heisa.com/data/2011-04-07_kkkenkai2.pdf (〃)
全国の放射能濃度一覧 http://atmc.jp/
小出裕章 (京大助教) 非公式まとめ 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章氏の情報発信 http://hiroakikoide.wordpress.com/
参考資料  マニュアルどおりにならない原発事故対応 〜パニックに陥らず、正確な情報で行動しよう http://d.hatena.ne.jp/chechen/20110325/1301023227
「社会情報リテラシー講義:福島原発事故をめぐる「安全」報道を考える」

    1. 第1回 「科学」「安全」「安心」:問題を整理する http://researchmap.jp/jowricset-111/#_111
    2. 第2回 基準と単位を整理する http://researchmap.jp/jo6nkzpvy-111/#_111
    3. ベクレルとシーベルトの変換 http://panflute.p.u-tokyo.ac.jp/~kyo/dose/

<電力の将来>スペインの風力発電、最大の電力源に成長 http://newsfromsw19.seesaa.net/article/195003319.html
流言・デマによるパニックを心配して情報を伏せている方々へ 静岡大学防災総合センター教授 小山真人 http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/etc/riskcom.html
ISEP: 3.11後のエネルギー戦略ペーパー:無計画停電から戦略的エネルギーシフトへ http://www.isep.or.jp/images/press/ISEP_Strategy110404.pdf
日本の加害者化 ーー対岸から火事を眺めて http://newsfromsw19.seesaa.net/article/194703247.html
福島原発震災(38)】フランスIRSNが海洋汚染のシュミレーション結果を発表 http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html
http://sirocco.omp.obs-mip.fr/outils/Symphonie/Produits/Japan/SymphoniePreviJapan.htm
気象庁IAEAの要請をもとにつくったシミュレーション http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/eer_list.html
放射能漏れに対する個人対策(第3版) http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html

(以上のまとめ:大富亮)