福島で人体実験が始まる
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今日のトピックス/この日記の目的/福島第一原子力発電所の状況/使用済燃料プールの冷却/大気を経由した汚染/汚染水・海水を経由した汚染(海洋投棄)/地下水を経由した汚染/モニタリングデータ/計画停電は何のため?/イベント情報/重要情報のブックマーク
今日のトピックス 福島で人体実験が始まる
おはようございます。
昨日(21日)は、福島の小中学校での汚染と、被爆基準値引き上げに関する政府交渉に行ってきました。とりあえずビデオを紹介します。
子どもの安全基準、根拠不透明〜市民の追及で明らかに
【ビデオあり】
福島老朽原発を考える会をはじめ3団体の呼びかけで21日、文部科学省が児童の放射線許容量を年間20ミリシーベルトとする安全基準を出したことに関して、その数値を撤回するよう交渉を行った。出席した文部科学省と内閣府原子力安全委員会の担当者は、ほとんどの質問に対して回答することができず、子どもの安全基準の根拠が不透明であり、きちんとしたプロセスがとられていない可能性があることが明らかとなった。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1012
なんというか、すごいつかれました……。
参議院議員会館の会議室を埋め尽くす、120人ほどの人々の前に、原子力安全委員会や文部科学省から、4人の若い官僚が説明に来ました。いまの被爆線量の上限である1ミリシーベルト/年を、その20倍の20ミリシーベルト/年に引き上げることを、誰が、どのように決めたのでしょうか。その過程は明らかになりませんでした。ただひとつわかったのは、原子力安全委員会も、この規制緩和のために会合を開かなかったということだけです。
これは緊急時、つまりやむをえない場合のための基準の緩和です。ほかにどうにもできない場合にのみ、認められる話のはず。たとえば、子どもたちを疎開させたり、汚染された校庭の表土を取ったり、可能なかぎりのことをした上で許される場合があるのですが、文部科学省がしたのは、ただ書類を書いて、基準を上げることだけでした。
基準が引き上げられると、子どもたちへの放射線管理手帳の交付すら、必要になるかもしれません。20ミリシーベルト/年というのは、一般人の20倍、普通の原発労働者1年分の被曝量の、4倍です。しかも、そういった高い被曝をする現場には18歳以下の人は立ち入ってはいけないことが、労働基準法で決まっています。これを子どもに浴びさせていいのか……?
そう思っていたら、今日の産経新聞にこんな記事がありました。「住民の健康を数十年調査へ 広島・長崎モデルに放射線研究機関」広島で被爆者を対象に研究を続けながら、一切治療を行わなかったことで悪名高い、原爆傷害調査委員会(ABCC)に始まる被爆研究の直系です。
彼らは大量の論文を製造しながら、人々を放射能から守るのではなく、結局、被爆基準の引き上げに賛成するだけです。そしてこれから福島で始まる研究から、新しい知識が生まれてくるでしょうが、そういうやり方は「人体実験」と呼べるものです。
ふう。つい、怒りをぶちまけてしまいました。
ビデオを見てもらうとわかると思いますが、会場も怒りの声に満ちています。若い官僚たちは、何も知らない状態でこの会議室に送り込まれたか、「何を言われても回答するな」と指示されて来たのでしょう。
しかし、その一方で、「被爆線量を20倍にする」という、たった一枚の通達書で失われていく命があります。権力というものは、何の表情も見せずに、淡々と、私たちを切り捨てていくことを、昨日知りました。
さて、怒りは怒りとして、明日はデータの整理をもう少し進めて、放射性物質との付き合い方を考えてみたいと思います。それではまた明日まで、お元気で。
この日記の目的
福島第一原発事故に関する情報を、手短にまとめる試みです。不正確な点がありましたら、どうぞメールなどでご指摘下さい。 editor@chechennews.org (情報提供もお受けしています)
サイトの内容の引用やリンクはご自由にどうぞ。
福島第一原子力発電所の状況
3号機炉心上部で温度上昇。12日:170度から、14日:250度。注水の増強が必要。(4/14東電発表)
1号機の炉心の7割以上が損壊しており、燃料の被覆管のジルコニウムなどから大量の水素が発生、水素爆発の危機が迫っている。
さらに危険なのは、圧力容器内で溶融した炉心が水と接触して発生する水蒸気爆発である。そして、原子炉内部での再臨界の可能性も有識者から指摘され始めた。福島原発の危機的状況は、なお拡大している。
下表の通り、タービン建屋地下に高濃度の汚染水が流出した事実は、格納容器の破損を意味している。「柏崎刈羽原発の閉鎖を科学者・技術者の会」によれば、圧力容器の底部に溶融した燃料が到達し、底部の制御棒挿入部を壊して、吹き出している可能性が高い。
「低レベル汚染水の放出」と呼ばれる、事前予告のない放射性物質の海洋投棄が続き、世界的な問題になりつつある。すでに中国、韓国、ロシアの政府とメディアからは批判が続出しており、大気へのベントも含めると、風下の北米圏からの批判が強まるのも時間の問題。
原子炉にもともと設置されている冷却システムが復旧する可能性は極めて低い。格納容器への注水が即・放射性物質を含む漏水となっている現状を考えると、今後環境に排出される放射性物質の量は相当多くなるであろう。
1号機 | 2号機 | 3号機 | 4号機 | |
製造 | 1971年GE製 | 1974,GE,東芝 | 1976,東芝 | 1978,日立 |
空中写真 | ||||
主な出来事 | 3/12 水素爆発(原子炉建屋) | 3/15 水素爆発(圧力抑制プール) | 3/14 水素爆発(原子炉建屋) | 3/15 水素爆発(使用済燃料貯蔵プール) |
原子炉 | 燃料400体。炉心溶融。圧力容器破損の疑い。温度低下、ノズル部で260度(上昇)。圧力容器への真水注入を中断、水素爆発防止のため窒素注入中。 | 燃料548体。炉心溶融。圧力容器破損。圧力抑制プール破損。真水注入中(!)。 | 温度急上昇中。燃料548体。炉心溶融。圧力容器破損の疑い。真水注入中 | 燃料なし |
燃料の損傷率* | 70% | 30% | 25% | - |
使用済燃料プール | 使用済燃料292体、新燃料100体。水位、水温不明。注水中断 | 使用済燃料587体、新燃料28体。燃料破損の疑い。水位不明、水温(51度)。注水中 | 使用済燃料514体、新燃料52体。水位、水温不明。注水中 | 使用済燃料1331体、新燃料204体(!)。燃料棒の一部が破損。通常の100倍濃度の汚染水あり。水温90度前後。注水中 |
高濃度汚染水 | 2万5千トン。タービン建屋地下の汚染水は380万ベクレル/cc。核分裂生成物(死の灰)漏出か。複水器から貯蔵タンクへ移送中。 | 2万5千トン。取水口付近の汚染水はヨウ素131が210ベクレル/cc(法定限度の5300倍)。核分裂生成物漏出か。複水器から貯蔵タンクへ移送中。 | 2万2千トン。原子炉建屋地下に深さ5mの汚染水。タービン建屋地下の汚染水は390万ベクレル/cc。核分裂生成物漏出か | |
その他 | 原子炉建屋内の温度40度、湿度94〜99%の蒸し風呂状態。放射線値不明。人間による内部での作業は極めて困難。 | ウランとプルトニウムを混在させたMOX燃料を装荷。制御困難に陥りやすく、拡散した場合に毒性が最も高い。 | ||
主な出典 | *4/7東電発表値を採用 東京新聞連載「福島第一原発の現状」、NewYorkTimes"Status of the Nuclear Reactors at the Fukushima Daiichi Power Plant"など 空中写真はPhotos of the Day - Fukushima Dai-ichi Aerialsより |
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使用済燃料プールの冷却
すべて生コン圧送機で注水中。
大気を経由した汚染
参考図
ドイツ気象庁による放射性物質の飛散予想(むこう3日間)。放出源の濃度が分からないため、気候条件のみによる予想です。つまり、この期間のあいだにあり得るベントや爆発によって、放射性物質が放出した場合に、どのように拡散するかをシュミレートしたものなので、この図から直接、危険度を評価することはできません。くわしい説明はこちらを:"with eyes closed." by Kan Yamamoto http://www.witheyesclosed.net/post/4169481471/dwd0329
汚染水・海水を経由した汚染(海洋投棄)
4月に入り、東電はタービン建屋で見つかった汚染水約1万トンを海洋投棄した。オリンピック規格のプール3杯分にあたる。汚染水のほとんどは、事故後の冷却作業による注水が、炉心と使用済燃料プールを経由して漏出しているため、冷却すればするほど、放出量も増加する。今も建屋に溜まっている水だけで6万トンにのぼる。
[http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819595E0E3E2E2938DE0E3E2E6E0E2E3E39F9FE2E2E2E2:title= また、2号機の取水口付近からの汚染水は、流出総量が推定で520トン、汚染水に含まれる放射性物質の量は4700兆ベクレル(4700テラベクテル)だった。]
「海はごみ捨て場じゃない」全魚連関係者が東電に抗議。http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY201104060148.html
今後、東北地方太平洋側の海洋は、かつてない規模の放射能汚染が続くと思われる。これについては、下記のフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)が作成した図が参考になる。
「原発はコストの低い電源であり、日本経済を支えている」といった主張は、急速に無意味なものになりつつある。むしろ、「原発は極めてコストの高い災害をもたらし、日本経済にトドメを刺そうとしている」と考える段階に来ているのではないだろうか。
政府と東電は「海水の放射能は拡散することで放射線量が減少するので影響は少ない」としているが、実は拡散した核種をプランクトンが吸い込み、それを魚が食べ・・・という形で、食物連鎖のなかで、蓄積されていく。そして高濃度に汚染された魚介類を、私たちが食べることになる。
発電所の沖合い30キロの地点でも、ヨウ素131やセシウム137が観測されている。4月13日の厚労省の発表によれば、福島県いわき市沖・福島第一原発から35キロの地点で採取されたコウナゴから、1万2500ベクレル/kgの放射性セシウムを検出した。食品衛生法での暫定基準値の25倍。
今後は、規制値の変更(緩和)にも注意が必要。
参考:汚染水の拡散予測(フランスIRSNによる)
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html
地下水を経由した汚染
2号機周辺に設置された井戸から出た地下水の放射能濃度が、ここ1週間で17倍に増加している。ヨウ素131が1ccあたり610ベクレル。(4/15朝日 http://www.asahi.com/national/update/0414/TKY201104140463.html )
モニタリングデータ
首相官邸のサイトより:放射線モニタリングデータ
http://www.kantei.go.jp/saigai/monitoring/index.html
計画停電は何のため?
今月で計画停電が終了の見込みなので、この項目は過去ログに入れました。
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20110407/1302151867#keikakuteiden
イベント情報
ぜひ、ご参加下さい。
4月24日(日)
●東京 くり返すな!原発震災 つくろう!脱原発社会 集会とデモ
http://www.peace-forum.com/gensuikin/katsudou/110424yotei.html●広島「原発なしで暮らしたい100万人アクション in ヒロシマ」
http://blogs.yahoo.co.jp/mxx941/3510988.html
4月19日〜5月1日
貝原浩作品展「僕の見たチェルノブイリ」
http://kaiharaten.exblog.jp/11173245/
参考文献と、重要情報のブックマーク
原子力資料情報室 http://cnic.jp/
「福島原発震災」をどう見るか―私たちの見解(その1)http://kk-heisa.com/data/2011-03-23_kkkenkai.pdf (『柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会』)
「福島原発震災」をどう見るか―私たちの見解(その2) http://kk-heisa.com/data/2011-04-07_kkkenkai2.pdf (〃)
全国の放射能濃度一覧 http://atmc.jp/
小出裕章 (京大助教) 非公式まとめ 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章氏の情報発信 http://hiroakikoide.wordpress.com/
参考資料 マニュアルどおりにならない原発事故対応 〜パニックに陥らず、正確な情報で行動しよう http://d.hatena.ne.jp/chechen/20110325/1301023227
「社会情報リテラシー講義:福島原発事故をめぐる「安全」報道を考える」
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- 第1回 「科学」「安全」「安心」:問題を整理する http://researchmap.jp/jowricset-111/#_111
- 第2回 基準と単位を整理する http://researchmap.jp/jo6nkzpvy-111/#_111
- 第3回 数値を確認する http://researchmap.jp/jo7wxgftu-111/#_111
- 第4回 事後と事前:安心と安全の境 http://researchmap.jp/joge2by5g-111/#_111
- 第5回 比べること:安心と安全の境(2) http://researchmap.jp/joxfh3rfa-111/#_111
- ベクレルとシーベルトの変換 http://panflute.p.u-tokyo.ac.jp/~kyo/dose/
<電力の将来>スペインの風力発電、最大の電力源に成長 http://newsfromsw19.seesaa.net/article/195003319.html
流言・デマによるパニックを心配して情報を伏せている方々へ 静岡大学防災総合センター教授 小山真人 http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/etc/riskcom.html
ISEP: 3.11後のエネルギー戦略ペーパー:無計画停電から戦略的エネルギーシフトへ http://www.isep.or.jp/images/press/ISEP_Strategy110404.pdf
日本の加害者化 ーー対岸から火事を眺めて http://newsfromsw19.seesaa.net/article/194703247.html
【福島原発震災(38)】フランスIRSNが海洋汚染のシュミレーション結果を発表 http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html
http://sirocco.omp.obs-mip.fr/outils/Symphonie/Produits/Japan/SymphoniePreviJapan.htm
気象庁がIAEAの要請をもとにつくったシミュレーション http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/eer_list.html
放射能漏れに対する個人対策(第3版) http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html
(以上のまとめ:大富亮)