2001.4.21 ジュネーブより

南無妙法蓮華経

二〇〇一年四月二一日
ジュネーブ

 ジュネーブチェチェン平和のための断食も三週間を満じようとしています。ご修行に入って以来、不思議なほど気力、体力とも爽やかになり、心静かに御祈念を励むことができました。心身ともに一年以上若返ったようです。時には一日雨に降られたり、昨日は雪さえ降りましたが、悩まされることもなく御祈念をつとめました。外気に一日九時間座りつづけるので体温が冷えて、寒気に対し抵抗力が弱まったことぐらいがお断食の変化かもしれません。
 来週四月二五日をもってお断食を完了する予定です。国連正門前の広場にて、また、国連宮殿内の大庭園の大樹に下で、連日誰からも妨害防止を受けることもなくお断食が成満されそうです。尊い二一世紀初めの立正安国の即是道場ともなりました。大地神も樹神もレマン湖竜神もアルプスの山神も天地日月もこの御修行を守り導いてくださったものと感謝にたえません。
 戦争の業苦のもとにあえぐチェチェン民衆の悲嘆と絶望の声は、いまだにこの国際社会の中心にはとどいていません。このジュネーブでのささやかな断食の行為はそれでも、チェチェンの人々にとっては大きな励ましのニュースとなりました。平和的解決にむけたロシア、チェチェン市民社会の新しい動きと連動しつつ、この紛争のゆきづまりを打開するきっかけが生まれることを期待します。また、フランス・チェチェン委員会、アメリカ・チェチェン委員会、カナダ・イスラム連盟、ユーラシア国際ネットワーク、日本予防外交センターなどの世界ネットワークにこの行動が広く紹介され、幅広い支持の声が寄せられました。二一世紀の地域紛争解決にむけた主権国家とその国連機構の限界を超えた地球市民の行動形態が確実に生まれつつあることを確信します。
 それはチェチェン戦争のみならず、このジュネーブに集まった世界中のNGOの代表たちとの交流からも、その展望がうかがえます。イラク、イラン、アフガニスタンカシミールスリランカチベットなど二一世紀世界がかかえる平和な地球社会の未来には、新しい世界精神、新しい地球市民理念、新しい地球市民の行動範囲が試されていると言えます。
 この人権委員会の作業を見ている限り、近代主権国家の貧しいばかりの限界と国家利害のかけひきの上になりたつリアルポリティークの国際政治の不毛は余りにも明らかです。
 去る一八日採択が予定されていたチェチェン決議案は結局、EUとロシア間で全会合意の議長声明案の交渉が続けられ、週末金曜の二十日夕刻六時の最終期限までもちこされました。コンセンサス合意を受け入れるため、イスラム会議の要求である政治的解決の進展にイスラム会議も貢献すること、そのために一九九六年のエリツィンマスハドフ合意を基とすること、チェチェン・ファイター側だけにテロ行為を非難しないことという三項目がパキスタン代表によって伝えられました。またアメリカが、ロシアの軍事行動がチェチェン市民に加えた戦争犯罪行為を名指しで非難し、ロシア政府がその処罰をやっていないことなどをはっきり明記する決議案の方を支持したことなどによって、コンセンサスに基づく議長声明案は陽の目をみることなく、二十日六時、EU提案のチェチェン決議が多数決で採択されました。
 ロシア側が全会一致の議長声明の中で政治的解決へむけた対話を保証し、チェチェンの市民の人権を保障することを確約するとすればそれも一理ありますが、国際社会の前で再びきびしい批判を受けることになった現実を直視することも必要です。EUとかつての社会主義国であった東欧のチェコラトビアポーランド、アフリカ諸国では二ジェル、南アフリカイスラム諸国からはカタールサウジアラビアパキスタンなど二二カ国が支持、反対に回ったのは昨年と同じく中国、インド、キューバ、アフリカ諸国ではケニアリベリアリビア、ナイジェリア、アジアではベトナムなど一二カ国。棄権したのはアジアの諸国が多く、日本、韓国、タイ、マレーシア、インドネシア南アメリカも多くが棄権でした。

 断食の目標としてあげた平和的解決にむけた対話の環境作りに日本の民間運動がその場を提供する案は、市民運動の担うべき新しい分野であると思います。
 世界宗教者によるチェチェンへの平和ミッションは具体案が生まれつつあります。近日中にその試案をお送りできると思います。
 小子は二七日の人権委員会終了後、二八日立宗会を迎え、体力回復の期間をおいて、五月初めにストラスブルグでチェチェン側の代表者と話し合いを持ち、五月十日にはウクライナにもどって五月満月のバイサク祭をウクライナ各地でつとめる予定です。新刊の『不戦非武装の新世紀』ロシア語の法話集がモスクワの全議員や学会、各大使館などへ配布中です。

合掌
寺沢潤世
各位様