チェチェン戦争は終わった?

99年の第二次チェチェン戦争の始まりから、2000年前半のグロズヌイ攻防戦の時期には、チェチェンからは悲惨な知らせが相次いだ。難民の車列が空爆されたり、10万人のグロズヌイ市民が包囲されたり。その時期に、東京にいてリアルタイムでニュースを受け取っていた自分の無力感を、今でもよく思い出す。

今も、なかなか伝わってこないだけで、戦闘は続いている。チェチェン側のウェブサイト、「カフカス・センター」の今日の通信によると、シェルゼン・ユルト、ヴェデノ、シムサールと、首都グロズヌイで戦闘があり、6月7日の一日の間に、ロシア軍に7人の戦死者があった。チェチェン側ゲリラの負傷者は2名。さらに、ここ4〜5日の間には40人のロシア軍・親ロシア派の兵員を殲滅し、および50人以上が負傷した。首都グロズヌイと、ノガイ・ユルト、ヴェデノなどでの、ロシア軍に対する攻撃により、チェチェン側のゲリラ3人が「殉教者」となったという表現をしている。死亡したということだ。ノガイでの戦闘は数時間続き、ロシア軍側は地上戦の支援のために、飛行機からの爆撃と、砲撃も行った。

出所が過激派に近い情報サイト「カフカス・センター」だけに、人数をそのままに信頼できるかどうかわからないが、チェチェンでは戦争が続いている。ゲリラ戦だけではない。毎年ロシアの人権団体メモリアルが発表する資料をもとにしても、数千人の市民が行方不明になり、消えている。人権というキーワードで、今までの書き込みを並べてみると、それが毎日のように続いているのがよくわかる。

もっとアンテナをとぎすましてこういう情報を拾っていかなければ、私の想像力も、チェチェンで殺されていく人々から離れていってしまうだろう。ロシア当局がチェチェンを封鎖しているのは、そうやって、チェチェンの現実と、私たちの認識との遮断を狙ってのことだ。これに対抗するための武器は、いまのところ、想像力あるいは、洞察力と呼ばれるものに多くを負っている。ひとつひとつはわずかな情報であっても、それを集積して、全体像を、できるだけ多くの人にわかるように描き出していく表現の力が必要だ。