独立派、北コーカサス山岳部で勢力を拡大

2007年9月5日 The JAMESTOWN FOUNDATION

原文: http://jamestown.org/edm/article.php?article_id=2372394


 この夏、北コーカサスの反乱軍の活動が激化してきた。現在、激しい交戦は一部の地域に限られている。けれども、ダゲスタンやチェチェン、イングーシ、カバルディノ・バルカリアといった共和国では、次の攻撃のための準備が行われていることは明らかである。

ダゲスタン

 ダゲスタンの地元警察当局に対する反乱軍の攻撃は、ここ数ヶ月間で劇的に増加しており、地方の暴動は今後より激しくなるだろう。最近の反乱軍の攻撃は、治安当局の措置に対する条件反射のようなものにすぎない。交戦は、特殊部隊が住居や都市、森林の防空壕で反乱軍を包囲したり、警察のパトロール隊が道端で彼らの車を止めたときにのみ起こっている。

 ダゲスタンの主な反乱軍は、地元の山岳中腹―主にブイナクスクとウンツクル地区―で部隊を拡大している。反乱軍の基地は、ギムリ村に程近い森のキャンプの中にある。ロシア連邦警察軍とダゲスタン警察軍は、春から夏にかけて何度もギムリと周辺の森の掃討作戦を行った。けれども、その成果はギムリ村でわずか一つの反乱軍を捕えただけで、ゲリラたちはその後逃走した。

 ダゲスタンの反乱軍は、山岳部で自分たちにに逆らおうとする地元民を殺害している。6月15日にはウンツクル地区警察署長のマゴメダリ・アリエフが殺害され、8月3日にはブイナクスク地区警察署の副所長が銃殺された。チェチェンに隣接するハサブユルト地区でも警官に対する襲撃が相次いでいる。地元警察は、ダゲスタン内の山岳部でいっそう警戒感を募らせている。8 月23日、共和国特殊警察隊はウンツクル地区で再び掃討作戦を行ったが、反乱軍はギムリ・トンネル―谷を隔ててダゲスタンの山岳部につながっている―付近で警察の先遣隊を待ち伏せした。

チェチェン

 ダゲスタン同様、チェチェンの反乱軍も山岳部で部隊を増強し、著しい成果を収めている。ノジャイ・ユルト地区のチェチェン人学生は、反乱軍が地元の多くの村を管理下に置いており、道路上に検問所を設けていることさえあると、カフカス・ウゼル・ウェブサイトの特派員に語った(カフカス・ウゼル 8/8)。

 8月23日、チェチェン警察筋は、独立系ロシアン・ソブコル・ニュース・ウェブサイトに対して、反乱軍がすでに共和国の領土の35%を支配していると述べた。sobkorr.ruによると、ロシア特殊軍の12人の兵士―ロシア連邦保安局(FSB)の職員1名、親ロシア派チェチェン警察官8名、兵士3名―が、8月11日と22日にチェチェン山岳部での交戦で死亡したという(sobkorr.ru 8/23)。9月3日、同ウェブサイトは、シャロ・アルグン村近郊の山岳部で6人の親ロシア派チェチェン兵が、9月1日に反乱軍の待ち伏せを受けて殺害されたと報じている。

イングーシ

 イングーシでは反乱軍は平原部で活発に動いている。この夏には警察と軍用車のパトロールや施設がおよそ30回にわたって襲撃された。一連の襲撃はすべて国内の広い住宅地や主要高速道路で起こっている。平原部で襲撃が起こるたびに、イングーシの反乱軍は山岳部に退却する。ロシア軍は、増援隊を他地域からイングーシに派遣して、南イングーシの山岳部を一掃しようとしているが、その都度ゲリラの強固な抵抗に遭っている。先月には、反乱軍とロシア軍が、ガラシキやDatykh、ヤンディリなど、イングーシの山岳部付近の村で、激しく交戦した。

カバルディノ・バルカリア

 カバルディノ・バルカリアは比較的平穏を保っているが、ここでも反乱軍による襲撃は徐々に増えている。ユーリー・トムチャク内務相は、最近、500人の反乱軍が山岳部に潜んでいると発表した(ネザビシマヤ・ガゼータ 8/3)。それが正しければ、この地域には、2005年に起こった首都ナリチクでの大規模な襲撃事件当時よりも多くの反乱者がいるということになる。

 もっとも、地元の警察や軍が、ゲリラを探すためになぜ山岳部を捜索しないのかということははっきりしない。ゲリラはエルブルース地区の居住地区に潜んでおり、地元住民からの強力な支援を受けている可能性がある。ゲリラを捕えようとする警官には、たいてい爆弾や銃が向けられる。夏には2名の巡査がエルブルース地区で殺害された。8月には地元反乱軍がティルナウズ町―エルブルース地区最大の居住地―で警察の検問所を襲撃し、警官1名を殺害し、もう一人に重傷を負わせた。

 北コーカサスの反乱軍の戦術には多くの類似点がある。ダゲスタンやチェチェン、イングーシ、カバルディノ・バルカリアの反乱軍は、遠隔地の施設―そこで将来の戦闘に参加する若い兵士を訓練できる―を手に入れるために、地元の山岳部の支配を優先している。北コーカサスの北部の丘陵地を支配下に置くことによって、反乱軍は部隊を山岳沿いに動かし、必要な増援軍をすぐに得ることができる。コーカサスで反乱軍を叩き潰すためには、ロシア軍司令部は山岳部で反乱軍と戦い、勝利する方法を見つけなければならないだろう。

 夏を通じて反乱軍の攻撃が増えてきたため、ロシア軍司令部は山岳部の戦闘を行うための特殊部隊を新たに編成して、北コーカサスに送り込み始めた。こうした部隊は、最終的には今年中に編成される山岳部自動車化狙撃隊に組み込まれ、カラチャエボ・チェルケシア(北西コーカサス)とダゲスタン(北東コーカサス)に配属されることになる。現在配属されている山岳部隊は、北オセチアのダリヤル―特殊山岳基地―に集中しており、そこで山岳部での戦闘訓練が行われている。7月から8月13日まで、山岳部隊は、完全装備で山岳部を移動する自軍の能力を測定するために、エルブルース山―北コーカサスで最も高い山―で一週間の訓練を行った(RIA-Novosti 8/13)。

 ところが、反乱軍がエルブルース山の山頂付近に潜んでいるということはありそうもない。彼らはたいてい山岳部の村近くにキャンプを設営している。けれども、そうしたキャンプを見つけて破壊することは、一年中雪に覆われた山を登れるロシア軍にとってさえ、難しい問題なのである。