戦場のチェチェン人医師、K.バイエフ氏からの現地報告

原文: http://www.chechenchildren.org/newsletter.html

2007年9月 チェチェンのインフラを再建するための3つの新プロジェクト

支援者のみなさま:

 ICCC(チェチェンの子どもたち国際委員会)は、[チェチェン戦争によって]孤児[となった子どもたち]を引き取った貧しい家族に対して、今後もささやかな援助を続けていくことを考えています。目覚しい成果を収めた小麦配給計画も続けていきます。

 私は先日チェチェンに5週間滞在しました(2007年3月のニュースレターで報告しました)が、それによって自分の生まれた国が医療危機に直面しているという思いがいっそう深まりました。ICCCは、先天性の障害を持つ子どもが増えていることを強く懸念しています。チェチェン戦争では、約4万人の子どもが殺されました。これは、チェチェン人の人口が100万人あまりであることを考えると、本当にぞっとするような数字です。殺されてしまった子どもが4万人もいるなら、戦争によって障害を負ったり負傷したりした子どもは一体どれくらいいるのでしょうか?そのことを考えると私たちは気がおかしくなりそうです。さらに、多くの子どもが先天的な障害を持って生まれてきますが、これは戦争によってひどい環境汚染が進んだためであると考えられています。チェチェンの最新の統計によると、3人に1人の子どもが、何らかの欠陥や障害を持って生まれてきます。
 以下のようなよい報告もあります:

  • スマイル作戦:最近、私はボストンにある小児科病院の形成外科で最新の技術を学んでいます。5月には口唇裂[上唇が生まれつき裂けている状態]と口蓋裂[上顎が生まれつき裂けている状態]の接合手術をしながら世界をかけめぐっている国際外科医の米国グループが主催している2週間のスマイル作戦の訓練に参加しました。11月、私はチェチェンに帰国し、20人の口唇口蓋裂の子どもを探し、スマイル作戦による手術を受けられるように準備をしました。私自身も何件かの手術を担当する予定です。
  • 医療機器:チェチェンでは、医療物資が不足しているため、子どもたちに提供できる医療が限られてしまっています。医療物資への需要は極めて深刻です。どうか、私たちが以下の必要な物資を入手できるよう、みなさまのご支援をお願いいたします。手術台、電気外科用発電機、麻酔器、頭蓋顎顔面手術用の器具。
  • 情報格差:ボストンの病院で手術の見学を重ねるにつれて、私は、先進諸国であればいつでも利用できる情報を、インターネットを通じて、チェチェンの医師と医療専門家に発信しなければならないという思いを強めていきました。チェチェンでは、多くの医療専門家はコンピュータを持っておらず、その使い方も知りません。この問題を解決するために、ICCCは、次のプロジェクトのための助成金の交付を申請しています。
    • グローズヌイの医療相談センター:医療資源への高速なインターネット・アクセスを実現します。あいにく、ほとんどのチェチェンの医師は、今でもコンピュータとインターネットを使いこなすことができないのですが。
    • グローズヌイの子どもインターネット情報センター:子どものためのインターネット図書館を作ります。チェチェン戦争が起こる前には、チェチェンには680の図書館がありました。今日、チェチェンには図書館は265館しかありません。そのうち子ども用の図書館は、たった18館です。
    • 女性のためのコンピュータ・リテラシー・センター:チェチェン戦争によって多くの家族は働き手を失ったまま取り残されています。このセンターは、コンピュータとインターネット技術を身につけることで、女性が給料の高い仕事を得られるように支援をします。

 前号のニュースレターでみなさまにご報告したように、私は、チェチェンの医療危機と再建問題について、今後も社会に訴えかけていきます。いつも温かいご支援をいただき、ありがとうございます。ICCCは、微力ではありますが、戦争によってもたらされた惨禍を多少なりとも和らげるために、意味のある貢献をしていきます。

ICCC代表/ハッサン・バイエフ医師