福島第一原発1号機は地震だけで破壊されていた!? 驚愕の事実が元設計者の分析で判明

 おはようございます。

 まともな技術者なら、浜岡原発を再稼働させようとは思わないはず‥‥と思うのですが、中部電力としては、防潮提を設置することで、なんとか再来年くらいには再稼働にこぎつけたいようです。原発が儲かるからでしょうか。お金の魅力というのは、ほんとうに恐ろしいです。

朝日新聞7/22) 中部電力は22日、浜岡原子力発電所静岡県御前崎市)に、高さ18メートルの防潮堤を建設すると発表した。東日本大震災で、東京電力福島第一原発が高さ約15メートルの津波に襲われたことを考慮して、これまで「15メートル以上」としてきた高さを、18メートルに決定した。
http://www.asahi.com/national/update/0722/NGY201107220018.html

 18メートルというのは、ちょうどこのぐらいの高さです。

(お台場にあらわれた等身大ガンダム

 ガンダムはどうでもよくて、今日の本題は、津波を防げれば、原発事故は防げるか? という問題です。原子力資料情報室に掲載された、サイエンスライター田中三彦さんの記事を紹介します。田中さんは元、日立の原子炉格納容器の設計者です。

“想定外”のためなら何でもする 東電、「シミュレーション解析」騙しのテクニック(原子力資料情報室通信、2011/7/1)

  国と東電が、できることなら永遠に遠ざけておきたい話は、東電・福島第一原発1〜3号機の重要な設備や機器が、“想定外”の大津波とは無関係に、「地震動」によって重大な損傷を負ったとすることだ。なぜなら、もし福島第一原発1〜3号機のいずれか一つにおいてでも、たとえばなにがしかの重要な配管が地震動で破損し、その破損部から冷却材が格納容器に噴出するような「冷却材喪失事故」(LOCA)が起きていたことがわかれば、「原発中枢構造の耐震脆弱性」という、地震国日本の原発の安全性を根底から揺るがす深刻な問題が浮上するからだ。 http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=1159

 ここから先は、ちょっとむずかしくなりますが、できるだけかみくだいて説明しますね。まず、この図をご覧ください。

 まず(1)まるいち、の矢印。原子炉の水位は、最初燃料棒の上端から5メートル上まであったのですが、地震発生後から6時間44分後までに一気に下降し、燃料棒の上端スレスレまで減ります。これは地震によって原子炉の配管のどれかが破断してしまい、冷却水が水蒸気として噴出してしまったためと考えられます。

 その一方、(2)の矢印では、地震発生後から11時間44分で、圧力容器を包んでいる格納容器の圧力が、普通の0気圧から7.4気圧まで高まります。ここが格納容器のピークで、しばらく続きます。

 こうして、圧力容器の気圧は下がり、外側の圧力容器の気圧は上がり同じ圧力になったために、原子炉の水位は燃料棒の上1.3メートル程度でしばらく推移しました。

 しかし格納容器は、7気圧もの圧力に耐えるようにはできていません。隙間が空いて圧力が下がり始めてしまいます。その隙をついて格納容器から再び水蒸気が噴出。ついに高熱の燃料棒が水の上に出てしまいます(5)。メルトダウンが始まります。

 そして、燃料棒を包んでいるジルコニウムと水蒸気が反応して大量の水素が発生、これが格納容器の外に漏れて、12日午後3時36分に水素爆発が起こってしまいました。

 格納容器の下には圧力抑制室があって、緊急時にはそこに送り込まれた水蒸気が、水の中を通ることによって減圧されることになっています。どうしてそれが今回働かず、水素爆発が起きる直前まで、7気圧の圧力がかかりつづけたのか。謎です。

 しかし、窒素ガスと水の挙動には予測できない部分があるため、圧力抑制室が設計どおりに動作するかどうかわからない、ということは、すでに1970年代にはGEの設計者たち自身によって指摘されていました。しかも今回の事故では、地震動まで加わってしまったのです。

*

 以上は田中さんの報告の概略ですが、わたしなりにまとめると、こういうことかと思います。

 まず、福島一号機では、地震によって圧力容器からの配管が破壊され、もしかしたら圧力抑制室も機能しなかったか、破壊されていました。

 前後して、外部から電源を供給するための送電鉄塔が倒壊してしまい、ディーゼル発電機や重油タンクが津波に流されました。全電源喪失です。

 とはいえ、圧力容器、格納容器の配管が破壊された時点で大勢は決していたので、もしそれらの電源があっても、できることは何もなかっただろうと思います。

 というわけで、最初のガンダム、ではない浜岡の防潮提に話を戻しますと、18メートルの防潮提を建てたところで、地震のときに原子炉が損壊することは防げません。浜岡原発はもちろん、日本の原発はすべて廃炉にするのが妥当です。

 田中さんの元記事、ぜひご一読ください。

http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=1159

 それではまた明日まで、お元気で。

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イベント情報

 ぜひ、お近くで開かれる集会やデモにご参加ください。次のサイトにイベント情報があります。

http://datugeninfo.web.fc2.com/

この日記の目的

 福島第一原発事故に関する情報を、手短にまとめて共有する試みです。不正確な点がありましたら、どうぞメールなどでご指摘下さい。 editor@chechennews.org (情報提供もお受けしています)サイトの内容の引用やリンクはご自由にどうぞ。

福島第一原子力発電所の状況

     1号機 2号機 3号機 4号機
製造 1971年GE製 1974,GE,東芝 1976,東芝 1978,日立
空中写真
主な出来事 3/12 水素爆発(原子炉建屋)、圧力容器破損 3/15 水素爆発(圧力抑制プール)、3/16圧力容器破損 3/14 水素爆発(原子炉建屋)、圧力容器破損 3/15 水素爆発(建屋)
原子炉/圧力容器 燃料400体。炉心溶融。底部破損 燃料548体。炉心溶融。底部破損 燃料548体。炉心溶融。底部破損 燃料なし
格納容器 破損 破損 破損 -
使用済燃料プール 使用済燃料292体、新燃料100体。水位、水温不明。配管から注水冷却 使用済燃料587体、新燃料28体。燃料破損の疑い。熱交換器で冷却中 使用済燃料514体、新燃料52体。水位、水温不明。配管から注水冷却 使用済燃料1331体、新燃料204体(!)。温度90度。燃料棒の一部が破損。仮設ホースで注水冷却。倒壊の懸念
高濃度汚染水 1万6200トン。タービン建屋地下の汚染水は380万ベクレル/cc。核分裂生成物(死の灰)漏出か。複水器から貯蔵タンクへ移送中。 2万4600トン。取水口付近の汚染水はヨウ素131が210ベクレル/cc(法定限度の5300倍)。核分裂生成物漏出か。複水器から貯蔵タンクへ移送中。 2万8100トン。原子炉建屋地下に深さ5mの汚染水。タービン建屋地下の汚染水は390万ベクレル/cc。核分裂生成物漏出か 2万2900トン。原子炉建屋地下。濃度も事故後に上昇を続けている。
その他 ウランとプルトニウムを混在させたMOX燃料を装荷。拡散した場合に毒性が最も高い。 もっとも多量の核燃料がプールに貯蔵されている。余震によるプールの倒壊・放射能の大規模拡散が懸念されている。
主な出典
東京新聞連載「福島第一原発の現状」、NewYorkTimes"Status of the Nuclear Reactors at the Fukushima Daiichi Power Plant"など
空中写真はPhotos of the Day - Fukushima Dai-ichi Aerialsより

 事故全体の規模は、核燃料と死の灰の量から考えて、チェルノブイリの3倍程度と考えられる。  1〜3号機の圧力容器、格納容器とも損壊。冷却水はすべて汚染水となって滞留/流出している。燃料は100%溶融して、圧力容器の底にたまっているか、外側の格納容器に落ちていると見られる(メルトダウン)。  4号機は地震当時、定期点検中だったため、もともと炉心に燃料がないが、建屋上部の使用済燃料プールには、大量の燃料が格納されている。燃料の崩壊熱を下げるために外部から注水を続けているが、水素爆発のためにプールは破損しており、冷却水がそのまま放射能汚染水となって漏出している。  放射性物質の大量の放出が続いている。原子力安全保安院は、4月に事故の深刻度を国際評価尺度の暫定評価で最悪の「レベル7」に引き上げた際は、大気への放出総量を推定37万テラベクレルとしていたが、6月6日に、こっそりと、約2倍にあたる77万テラベクレル(77京Bq)に上ると発表しなおした。  なお、チェルノブイリ事故での放出量は520万ベクレルなので、福島事故で放出された量は、チェルノブイリ事故の14%ということになる。しかしこれは日本政府の発表した数字なので、今後大きく変わる可能性がある。

 爆発などが起こっておらず、比較的落ち着いていた4月5日の時点でも、一日あたり154兆ベクレルが放出されていたという報道がある

 原子炉にもともと設置されている冷却システムは復旧しなかった。格納容器への注水が即・放射性物質を含む漏水となっている現状を考えると、今後環境に排出される放射性物質の量は相当多くなるであろう。

放射線医学総合研究所への質問

「100ミリシーベルトまでは安全です。ただし単位は生涯です」という文書を発表している独立行政法人放射線医学総合研究所に対して、公開質問をしています。まだ返事がありません。過去のやりとりはこちら: http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20110614/

大気を経由した汚染

参考図

ドイツ気象庁による放射性物質の飛散予想(むこう3日間)。放出源の濃度が分からないため、気候条件のみによる予想です。つまり、この期間のあいだにあり得るベントや爆発によって、放射性物質が放出した場合に、どのように拡散するかをシュミレートしたものなので、この図から直接、危険度を評価することはできません。くわしい説明はこちらを:"with eyes closed." by Kan Yamamoto http://www.witheyesclosed.net/post/4169481471/dwd0329

汚染水・海水を経由した汚染(海洋投棄)

 4月に入り、東電はタービン建屋で見つかった汚染水約1万トンを海洋投棄した。オリンピック規格のプール3杯分にあたる。汚染水のほとんどは、事故後の冷却作業による注水が、炉心と使用済燃料プールを経由して漏出しているため、冷却すればするほど、放出量も増加する。今も建屋に溜まっている水だけで6万トンにのぼる。

[http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819595E0E3E2E2938DE0E3E2E6E0E2E3E39F9FE2E2E2E2:title= また、2号機の取水口付近からの汚染水は、流出総量が推定で520トン、汚染水に含まれる放射性物質の量は4700兆ベクレル(4700テラベクテル)だった。]

「海はごみ捨て場じゃない」全魚連関係者が東電に抗議。http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY201104060148.html

 今後、東北地方太平洋側の海洋は、かつてない規模の放射能汚染が続くと思われる。これについては、下記のフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)が作成した図が参考になる。

 「原発はコストの低い電源であり、日本経済を支えている」といった主張は、急速に無意味なものになりつつある。むしろ、原発は極めてコストの高い災害をもたらし、日本経済にトドメを刺そうとしている」と考える段階に来ているのではないだろうか。

 政府と東電は「海水の放射能は拡散することで放射線量が減少するので影響は少ない」としているが、実は拡散した核種をプランクトンが吸い込み、それを魚が食べ・・・という形で、食物連鎖のなかで、蓄積されていく。そして高濃度に汚染された魚介類を、私たちが食べることになる。

 発電所の沖合い30キロの地点でも、ヨウ素131やセシウム137が観測されている。4月13日の厚労省の発表によれば、福島県いわき市沖・福島第一原発から35キロの地点で採取されたコウナゴから、1万2500ベクレル/kgの放射性セシウムを検出した。食品衛生法での暫定基準値の25倍。

 今後は、規制値の変更(緩和)にも注意が必要。

参考:汚染水の拡散予測(フランスIRSNによる)
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html

地下水を経由した汚染

 2号機周辺に設置された井戸から出た地下水の放射能濃度が、ここ1週間で17倍に増加している。ヨウ素131が1ccあたり610ベクレル。(4/15朝日 http://www.asahi.com/national/update/0414/TKY201104140463.html )

 冷温停止中の福島第一原発5、6号機の地下でも、低レベル汚染水をを検出。(4/3)

モニタリングデータ

 首相官邸のサイトより:放射線モニタリングデータ
http://www.kantei.go.jp/saigai/monitoring/index.html

署名など、あなたにできるアクション

福島の子どもたちを被ばくから守るための署名をしてください。【アクション】[第2弾]子ども20ミリシーベルト基準の即時撤回および被ばく量の最小化のための措置を求める緊急要請  オンライン署名フォーム http://e-shift.org/?p=485
子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク
http://kofdomofukushima.at.webry.info/
Please SIGN to save children in Japan from radiation
http://fukushima.greenaction-japan.com/archives/41
MSCR (Moms to Save Children From Radiation) (日英語)
http://fukushima.greenaction-japan.com/archives/41

東日本からの避難に関連するリンク

母子疎開ネットワーク http://hinanshien.blog.shinobi.jp/
オペレーションコドモタチ http://www.soybeans.co.jp/op_kodomo/

参考文献と、重要情報のブックマーク

「僕と核」2011 http://e22.com/atom2/avg.htm
ササユリの咲く頃に。 http://ameblo.jp/kenken4433/
早川由紀夫の火山ブログ http://kipuka.blog70.fc2.com/
原子力資料情報室 http://cnic.jp/
福島原発事故情報共同デスク http://2011shinsai.info/
SAVE CHILD 放射能汚染から子供を守ろう http://savechild.net/
原発震災への対処> 知識を獲得し、汚染される覚悟を持って、楽天的に! 矢ヶ崎克馬(琉球大学名誉教授) http://newsfromsw19.seesaa.net/article/192524452.html?1305530571
Peace Philosophy Centre http://peacephilosophy.blogspot.com/
福島原発震災」をどう見るか―私たちの見解(その1)http://kk-heisa.com/data/2011-03-23_kkkenkai.pdf (『柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会』)
福島原発震災」をどう見るか―私たちの見解(その2) http://kk-heisa.com/data/2011-04-07_kkkenkai2.pdf (〃)
全国の放射能濃度一覧 http://atmc.jp/
小出裕章 (京大助教) 非公式まとめ 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章氏の情報発信 http://hiroakikoide.wordpress.com/
参考資料  マニュアルどおりにならない原発事故対応 〜パニックに陥らず、正確な情報で行動しよう http://d.hatena.ne.jp/chechen/20110325/1301023227
「社会情報リテラシー講義:福島原発事故をめぐる「安全」報道を考える」

    1. 第1回 「科学」「安全」「安心」:問題を整理する http://researchmap.jp/jowricset-111/#_111
    2. 第2回 基準と単位を整理する http://researchmap.jp/jo6nkzpvy-111/#_111
    3. 第3回 数値を確認する http://researchmap.jp/jo7wxgftu-111/#_111
    4. 第4回 事後と事前:安心と安全の境 http://researchmap.jp/joge2by5g-111/#_111
    5. 第5回 比べること:安心と安全の境(2) http://researchmap.jp/joxfh3rfa-111/#_111
    6. 第6回 冷静と混乱のあいだ http://researchmap.jp/joq9cru43-111/#_111
    7. 第7回 「安全」の視点から情報と対応を検討する http://researchmap.jp/jo46bzfzc-111/#_111
    8. ベクレルとシーベルトの変換 http://panflute.p.u-tokyo.ac.jp/~kyo/dose/

<電力の将来>スペインの風力発電、最大の電力源に成長 http://newsfromsw19.seesaa.net/article/195003319.html
流言・デマによるパニックを心配して情報を伏せている方々へ 静岡大学防災総合センター教授 小山真人 http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/etc/riskcom.html
ISEP: 3.11後のエネルギー戦略ペーパー:無計画停電から戦略的エネルギーシフトへ http://www.isep.or.jp/images/press/ISEP_Strategy110404.pdf
日本の加害者化 ーー対岸から火事を眺めて http://newsfromsw19.seesaa.net/article/194703247.html
福島原発震災(38)】フランスIRSNが海洋汚染のシュミレーション結果を発表 http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/irsn-b3b6.html
http://sirocco.omp.obs-mip.fr/outils/Symphonie/Produits/Japan/SymphoniePreviJapan.htm
気象庁IAEAの要請をもとにつくったシミュレーション http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/eer_list.html
放射能漏れに対する個人対策(第3版) http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html

読み物系ブックマーク

早尾貴紀:緊急、原発震災関連 http://hayao2.at.webry.info/
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まとめ:大富亮