人権団体への弾圧

2007年8月29日 ヒューマン・ライツ・ウォッチ

原文:
http://hrw.org/english/docs/2007/08/29/russia16771.htm

 8月28日、ロシア警察は、ニジニ・ノブゴロド州のNGOの立ち入り捜査を行い、違法ソフトウェアを使用しているという容疑で、コンピュータ4台を押収しました。強制捜査を受けたのは「トレランス・サポート基金」というNGOで、2006年10月に潰されたロシア・チェチェン友好協会のメンバーが立ち上げた、多民族共生のための啓発活動をしている団体です。「トレランス・サポート基金」のオクサナ・チェリシェワ代表によると、当局は査察を行うための捜査令状を持っていましたが、そこには捜査理由がまったく書かれていませんでした。

 「昨日の朝、オフィスにやってきた警官が最初に訊いたことは、『ドミトリエフスキー(訳注:閉鎖されたロシア・チェチェン友好協会の代表)はどこだ?』でした」(オクサナ・チェリシェワ)

 「『トレランス・サポート基金』は目をつけられて見せしめにされたのだと思います。基金はコンピュータがなければ回りませんが、コンピュータの押収は始まりにすぎないでしょう。今後も当局が令状を振りかざして査察を繰り返すかもしれません」

 「『トレランス・サポート基金』への弾圧は、どれほど簡単に、政府が法的手段を用いて被害者支援団体に嫌がらせができるかということを物語っています。こうした事例はあまりにも頻繁に起こっており、やめさせなければなりません」(ヒューマン・ライツ・ウォッチ欧州・中央アジア局長 ホリー・カートナー)

 さらに8月29日、ロシア警察は、社内監査の名目で、ニジニ・ノブゴロド州の独立系新聞ノヴァイア・ガゼータを強制捜査し、同じく違法ソフトウェアの使用容疑で、コンピュータ6台を押収しました。コンピュータにはノヴァイア・ガゼータの過去の記事がすべて保存されていましたが、当局は記者たちにまったくバックアップを取らせないまま、コンピュータを持ち去りました。

 ノヴァイア・ガゼータのザハル・プリレピン編集長は、押収されたコンピュータは記者の私物で、警察は差し押さえ状を持っていなかったと話しています。ノヴァイア・ガゼータは地元当局に対して批判的な記事を載せていました。ノヴァイア・ガゼータには新たにコンピュータを購入する財政的余裕がないため、当局がこのままコンピュータを押収している限り、ノヴァイア・ガゼータは廃刊に追い込まれることになります。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチは、人権擁護団体の活動を停止させる目的で、当局がコンピュータ機器を押収しているとして非難しています。