ロシア下院選挙まで3か月 大統領、影響力保持狙う―与党支配と後継指名で―
2007年9月2日 読売新聞
【モスクワ=緒方賢一】ロシア下院選挙(12月2日投票)まで2日で3か月となり、プーチン大統領は一両日中に大統領令に署名し、選挙戦が正式に始まる。下院選の結果は、2008年春の任期満了後も国家運営への関与をめざすプーチン氏の権力の行使に直結する。政権与党の議会支配と後継候補の指名を通じ、影響力の保持を狙う大統領の動きがいよいよ本格化しそうだ。
下院(定数450)選挙には、与党「統一ロシア」や野党の共産党など17政党が参加。今春、デモを鎮圧された反プーチン連合「もう一つのロシア」は、政党とは認定されておらず、選挙に参加できない。
定数の半分を占めた小選挙区は今回から廃止され、全議席を政党に配分する比例代表制に一本化される。各党は10月初めまでに候補者名簿を決定する。
議席獲得に必要な得票率は今回、5%から7%に引き上げられ、国内各紙は議席を得られる政党は四つか五つにとどまるとの見通しを示している。
プーチン大統領は後継候補を指名する方針で、指名時期について、大統領府のペスコフ副報道官は8月末、会見で「下院選に合わせ大統領の意中の候補が明らかになるだろう」と述べた。「統一ロシア」と第2与党「公正ロシア」が、選挙戦を通じプーチン路線の継続をアピールする時期に、大統領は焦点の後継問題に道筋をつけ、次期政権の「後見人」として、自身の実験を維持する狙いとみられる。
プーチン大統領が来年春以降、どのような役職で権力を維持するかは不明だが、政権支持の政治評論家は「権威を持つのはプーチン氏個人であり、肩書きは重要でない」と指摘する。下院選と後継者指名はこうした礼賛ムードを浸透させる仕掛けでもある。
一方、選挙に向け野党切り崩しも進む。高齢者や低所得者層の支持獲得を目指し、昨年秋に政権の後押しで発足した「公正ロシア」は8月、共産党の支持基盤だった青年組織を分断し、一部団体の支持を取り付けた。さらに、極右「自由民主党」からもジリノフスキー党首の右腕で知名度の高いミトロファーノフ副党首を取り込んだ。
「コメルサント紙」によると、国営「第1チャンネル」の選挙担当副社長に8月、「統一ロシア」の選挙対策顧問が就任しており、政権によるメディア統制も一段と強まる見通しだ。