プーチンは本当に「国民的指導者」なのか?

[もう一つのロシア 12/5]
原文: http://www.theotherrussia.org/2007/12/05/russians-skeptical-about-%e2%80%98national-leader%e2%80%99/

 ウラジーミル・プーチンにロシアの「国民的指導者」としての地位を認めるロシア人は、たった17%にすぎない。独立系レヴァダ・センター世論調査グループによるこの調査結果は、12月5日にヴェドモスチで報じられた。
 センターによると、ロシア人の30%は、プーチンを国民的指導者と見なすのは個人崇拝じみていると考えている。27%の人々はプーチンに国民的指導者としての役割を認めようとしているが、そのためには全国での投票でその地位が認められること、もしくは、憲法によって特別な権限が定められることが条件であるとしている。また、39%の人々は、「国民的指導者」運動など聞いたこともなく、60%の人々はその実態について何も知らずにいることが明らかになった。レヴァダ・センターは、11月23日から26日まで、ロシアの46地域で1600人にアンケートを実施した。ちなみに、回答者の84%はプーチンを支持していた。

 全ロシア世論調査センター(VCIOM)も調査を実施したが、質問項目はレヴァダ・センターのものとは別に設定された。全ロシア世論調査センターの結果は、国民的指導者運動がより多くの人々に支持されているというものであり、センターが政府のコントロール下に置かれているため、信頼性にも欠ける。投票がクレムリン寄りになっているという批判も挙げられている。

 レヴァダ・センターのアレクセイ・グラジャンキンは、レヴァダ・センターの調査結果は、ロシア人の新たな民主主義文化を反映していると考えている。社会学者によると、ソ連の伝統が回復する兆候が、人々を苛立たせているという。

 12月2日の下院選を前に、プーチンは投票を自身に対する信任投票と位置づけた。プーチンによれば、統一ロシアへが圧倒的な勝利を遂げれば、それは、プーチンが権力を保持し、ロシアの「国民的指導者」になることへの「道義的権威」になるということだった。そして、「プーチン計画」という大衆運動が全土で繰り広げられ、大統領の二期目が終わる2008年以降も、プーチンが権力の座に留まることが要請された。

 プーチンへの信任投票というものがどんなものだったのかということについては、12月4日のMoskovskii Komsomoletsが興味深い公開書簡をプーチンに送っている。

 著者:アレクサンドル・ミンキン、「プーチン運動は成功したのか?」、大統領への公開書簡、Moskovskii Komsomolets (2007年12月4日)

 「『死せる魂』による投票」(大統領への公開書簡)、Moskovskii Komsomolets (2007年12月4日)

 アレクサンドル・ミンキン

 公開書簡:信任選挙についてのいくつかの疑問

 親愛なる大統領殿。大統領殿におかれましては、国民投票の結果にご満足いただけましたでしょうか?大統領殿は、ごく最近、全世界に向かって、私たちが行うのは下院選ではなく、あなたに対する信任投票だとおっしゃいました。覚えていらっしゃいますか?

 さて、私たちは選挙の結果をどのように受け止めればよいのでしょう?輝かしい勝利?いえいえ、ここでちょっと計算機を借りてきて、計算をしてみましょう。

 ロシアの全有権者数は1億670万人です。

 大統領殿に投票した人々の数は、4350万人です。確かに大勢の人々があなたに投票しました。ですが、それでも実は全有権者の半分にも届いていないのです。

 さて、次の問題ですが、いったいあなたに投票した4300万人のうちどれだけの人々が、実際に良心にもとづいて投票できたのでしょうか?大統領殿への投票の圧力は、強烈で凄まじかったため、この問いは極めて重要です。クレムリン当局や州知事から、地方政府や教師への圧力、全国家を支配するヒエラルキーは、恐慌寸前のフル稼働ぶりでした。「高投票率を!統一ロシアへの投票を!」。人々は、「正しく」投票しなければ、職を失ったり、その他多くの罰を与えられると脅されました。

 多くの投票所の投票記入所では、秘密投票を行うための備品が置かれていなかったのですが、これは初めてのことでした。まったく前代未聞のことです。スターリン時代のソ連の選挙でさえ、投票記入所にはプライバシーを保護するための仕切りがありました。

 大統領殿を心の底から支持して投票をした数百万人の人々は、あなたへの投票を強制された連中と一緒くたにされて、さぞ不愉快な思いを味わっていることでしょう。ですが、その二つのグループはどうすれば分けられるのでしょうか?

 いったいどれだけの人々が、信頼と支持に突き動かされて、自発的に大統領殿に投票したのか―そんなことはどうしたって解りません。

 けれども、どれだけの人々が、あなたを支持しなかったか、あるいは無関心であったかということは、少なくとも知ることができます。彼らは、投票を拒んだ人々であり、あなたに反対する票を投じた人々です(おっと、これは大統領殿の言い分ですよ。「統一ロシアに投票する者は私の支持者だ」というのはね)。

 あなたに投票したのは、1億672万5372人のうち4350万人です。ということは、残りの6200万人は・・・えーと、気の利いた言い方をすれば・・・。

 どういうわけか、大統領殿は見映えのよい結果を求めていらっしゃいましたし、実際にそういうことになりました。投票率64%という数値は極めて説得力を持っています。個人を気にせず、数だけを数える分には。

 ・・・それはそれとして、なぜ投票率は64%になったのでしょうか?議会が砲撃された後の1993年には、人々は投票への凄まじい熱意を持っていました。私たちは憲法をめぐって真の国民投票を行いました!ところが、投票率はたったの54.8%だったのです。

 ・・・それもそれとして、いったいどういうわけで、ロシアには1億700万人もの有権者がいるのでしょうか?

 1993年の選挙では、ロシアの有権者数は1億600万人でした。1995年の選挙では1億500万人。それ以来、ことあるごとに忌々しく思い知らされているように、ロシアの人口は年平均100万人ペースで減り続けているのです。

 こうして、有権者の数は減り続け、減り続け、そして突如として!増えたのです(最近は出生率が上がっているなどという反論は受けつけません。だって赤ちゃんは投票できないんですよ?)。

 ただ単に他国の物まねをしても上手くいかないということがよく解りました。

 私たちには選挙があり、投票用紙があり、投票箱があり、投票集計所があります。欧米が同じことをすれば、結果は議会に反映されます。けれど、私たちが手にするものは、表面を覆う厚い泡だけで、その中身には手が届かないのです。

(翻訳:エレーナ・レノヴァ)