戦場のチェチェン人医師、K.バイエフ氏からの現地報告(2)

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原文: http://www.chechenchildren.org/newsletter.html

2008年1月

 支援者のみなさま:

 チェチェンの情勢が近年改善してきているため、私はグローズヌイに2ヶ月間滞在して、現地の医療状況をモニタリングすることができました。私がチェチェンに滞在している間、ICCC(チェチェンの子どもたち国際委員会) の役員のルース・ダニーロフとニコラス・ダニーロフが、グローズヌイを訪ねてきてくれました。二人も、自分の目でチェチェンの病院の状況を観察し、ICCCの支援金がどのように使われているかを確認することができました。こちらについては、ルース・ダニーロフがチェチェンの全般的な印象について語った ボストン・グローブの記事をご覧ください。

 私たちは、政府が再建費用を一部援助しているグローズヌイの神経科病院を視察しました。他にも盲学校を視察しましたが、学校は再建されており、暖房器具も備わっていました。チェチェン視覚障害者協会のハーヴァ・カリモヴァ代表は、視覚障害聴覚障害を持つチェチェンの子どもたちが必要な支援を受けられるように活動をしています。私たちは、ボストンのパーキンズ盲学校から専門家を招聘しました。パーキンズ盲学校は、視覚障害や視覚・聴覚の重複障害を持つ子どもたちを社会に送り込む教育にかけては、世界有数の専門機関です。

 チェチェンに2ヶ月間滞在して私が得た結論は、戦争の余波は戦争そのものに劣らず悲惨だということでした。チェチェンでは復興が進んでいますが、その裏を覗けば、悲惨な医療問題が隠れています。チェチェンでは出生率が上昇していますが、主に戦争と環境の汚染によって先天性の障害を持って生まれる子どもの割合も増えています。グローズヌイに滞在している間、私は、毎朝第9私立病院を訪れては、様々な障害―口蓋裂、口唇裂、ダウン症―や重度の火傷といった怪我に苦しむ子どもを持つ親たちの訴えに耳を傾けてきました。チェチェンには先天性障害や出生前の治療ができる専門家は実質的に存在しません。病院には超音波装置やX線機器といった基本的な診断装置もありません。復興が始まったとはいえ、私が子どもたちの病気の相談を受けていた病院は、雨漏りをするひどい有様でした。

 また、私は、世界中で口蓋・口唇裂の子どもたちを手術する国際組織「オペレーション・スマイル」の活動に参加し、手術が必要な20人の子どもを見つけ、バスを手配してロシア南部のタガンログ市に連れて行きました。私自身も国際外科医チームの一員となって、手術を行いました。手術が終わると、私は子どもと母親たちと一緒にバスでグローズヌイに戻りました。翌月にはそれぞれの子どもたちの家を頻繁に訪れて、子どもたちが回復していることをボストンに戻る前に確認することができました。今年9月には、「オペレーション・スマイル」は、米国の外科医を招いて、チェチェンでミッションを実施する予定です。

 ICCCは、チェチェンの子どもたちを支援するために最も必要なことは、医療機器の支援に加えて、医療専門家にインターネットで情報を提供することだと確信しています。チェチェンでは大半の医師がコンピュータを持っておらず、その使い方も知りません。このため、私は、医療専門家が世界中の医療情報にアクセスできるインターネット医療センターをグローズヌイに設立するための基金を立ち上げようとしています。

 支援者のみなさまのご協力に改めてお礼を申し上げます。私がチェチェンで出会った多くの人々が、みなさまの支援に感謝していたことを、ここでご報告したいと思います。

 米国はイラクでの戦争を続けていますが、それでもなおアメリカにいるみなさまがチェチェンのことを考えてくださっていることに、多くの人々が感激していました。

 本当にありがとうございました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 ICCC代表 ハッサン・バイエフ