日本の仏教僧からアーラ・ドゥダーエワ(元チェチェン大統領ジョハル・ドゥダーエフの未亡人)に宛てた公開書簡

チェチェンの人々の非暴力の聖なる使命と法華経の未来記」
英語原文からの著者による訳文
寺沢潤世

南無妙法蓮華経
アッサラーム・アレイクム
親愛なるアッラ・ドゥダーエワさん。
今度、そちらに、新に移られてから生活に新しい希望と可能性が開かれた事を期待しています。久しく直接お便りを差し上げることは出来ませんでしたが、貴女と私の弟子たちとの手紙のやりとりを、時々私も伺い、今度、六ヶ月余りの極東の旅から戻った中央アジアビシュケクの私たちの道場で、セルゲイ師に宛てられた最新の貴女からのお便りに接しました。いつもながら、私たちの様々な行動への貴女の常かわらぬ温かな思いやりは、私たちへの大きな精神的励ましとなっています。深く感謝いたします。

今日、私は貴女にこの手紙をみとめていますが、同時に今のチェチェンの人たちの現状とありように対する私の最近の想いを他のチェチェンの友人たちにも知ってもらおうとして書いています。
私はここで、チェチェンにおける戦争と平和に関する現今の政治的諸問題や、人道、人権または長期におよぶチェチェン紛争の政治的解決について語り合おうとしているのでは、ありません。
それぞれの国と民族には独自の精神があります。今日、私が問いたいのは、いかにしてまことに希有にして美しいチェチェン精神が、今未曽有の苦難を耐えつつあるチェチェンの次の世代のために残されうるのか、またそのような精神を甦らせて全人類と共有しうるのかということです。

というのは、チェチェン霊性の蘇りこそが、今歴史の重大な変わり目にある全人類の霊性の根源的な変革をもたらすであろうと私は信ずるからです。一九九三年に初めてチェチェンを訪ねて以来、それこそが、チェチェンの人々が、全世界のためになしうる最大の貢献になるだろうという思いに至りました。

チェチェンの人々の究極の勝利とは、ロシアへの軍事的勝利でも、チェチェンの国家形態としての政治的独立の獲得でもなく、この使命を実現することにあります。今将に全チェチェン民族は、生き残りうるか、否かの瀬戸際にあります。チェチェン民族は、この精神に再び目覚めるのでしょうか?それとも、民族の物理的根絶に至るのでしょうか?

私と我が教団の弟子達は、残虐なチェチェンでの第一次戦争の初期段階において、しばしば非暴力の民衆蜂起を指導しました。それらの日々、私たちはチェチェンの人々との深い霊的一体性を感得し、チェチェン精神の素晴らしい奇跡的顕現を体験しました。私はその時、チェチェンの人々の秘める非暴力の偉大な力の可能性を完全に理解したのです。非暴力とは、強大な軍事力に抵抗する政治的手法でも、帝国に抵抗する政治的術策でもありません。

非暴力とは、物理的破壊力や政治権力の独占への盲目的論理から人々を解き放ち、地上のあらゆる人の心と魂に、永遠・普遍に存在する全く異次元の霊性の論理に目覚めさせることによって、畏れなき心―「無畏」を獲得し、人々を一体化せしむる力なのです。

チェチェンの人々がユニークなのは、悠久の太古より全ユーラシアの民族と国々の霊性の共通普遍の根源であった、本来の清浄なる真の精神を二十一世紀の今日まで保持し、体現して来たからなのです。

このチェチェン精神の神変に出会った時、私達の法華経の修得と、世を救うために命を捧げる菩薩の生き方と、全く同じルーツをそこに確信しました。今日まで私はチェチェンの人々がその精神と法華経が本質的に同じものであることに気づいてくれることを待っていました。

貴女はセルゲイ師への手紙の中で、法華経が予言する様に、今の悩める世界に無数の地湧の菩薩が現れる時が来たと、述べておられます。これこそが、私達がチェチェンの人々から待っていた事なのです。私達がチェチェンにもたらそうと望んだのは、はるか後世に出来た、宗教信仰の外形的形態を越克した、その素晴らしい精神の一体性の奇跡なのです。

私達が南無妙法蓮華経を唱えて撃鼓宣令するのは、人々を特定の宗教へ改宗するのではなく、遙か昔よりユーラシアのあらゆる民に共通した久遠の霊性を蘇らせ、その精神によって人々が一つとなって、近づきつつある破局的な暴力の文明間の衝突から全世界を救おうとすることなのです。私は今も、チェチェンの人々がこの運命的な歴史の変わり目において、その聖なる使命を実現する最初の民族となることを信じています。

その前例をあげましょう。

私の師匠は、インドに行き、そこでマハトマ・ガンジーと会いました。ガンジーは、その使命信じ、法華経の修行を始めた最初のインド人でした。インド自治獲得の非暴力闘争の中で、他の多くの独立闘争のリーダー達も宗教宗派を問わず、その例に倣いました。独立インドは、今日でもマハトマ・ガンジーを記念する国家式典において、その習わしを続けています。

また、冷戦終結前のヨーロッパでは、私達の法華経の撃鼓宣令は、やがてヨーロッパ中の街頭に何千、何万、何十万、百万のヨーロッパの人々を導き、一心同体となって、平和を目指し、核戦争から世界を救うために平和行進を行いました。そうしたヨーロッパの人々は、仏教信者でも何でもありません。

しかし、心は一つでした。ついに前代未聞の政治革命がヨーロッパに起こりました。ヨーロッパは平和の内に統一されました。ミルトン・キーンズ、ロンドン、ウィーンにあるピースパゴダは、こうしたヨーロッパ最大の非暴力革命と、変身の記念塔なのです。非仏教的ヨーロッパは、この出来事を心から迎え入れてくれました。

親愛なるアッラ・ドゥダーエワさん。
 私はここで自分の素直な想いを書きました。それも貴女が予見する様に、無数のチェチェンの地湧の菩薩が出現するであろうからです。彼らはジェノサイド戦争の廃墟から、真のチェチェン精神を蘇らせるでありましょう。そしてチェチェンの人々だけでなく、コーカサス、全ユーラシアの全ての国と民を目覚めさせるでありましょう。

文明間の破局的世界戦争の危機は、この霊性的変革によってのみ、回避する事が出来ます。非暴力の勝利には、一人の人も殺す必要はありません。そして万人が救われるのです。それは、手遅れにならない内に、必ず成し遂げなければなりません。

貴女へのこの手紙を、チェチェンの人々へのアッピールとして公開することをお許し下さい。コピーは、サイード-アミン・イブラヒーモフ氏とハッサン・バイエフ博士に送りました。また、その他多くのチェチェンの友人達にも送りましたが、その個々のリストは秘させていただきます。

私達が、みな一緒にチェチェンと世界の平和の新たな可能性を開く日の近からんことを祈りつつ。
深き尊敬と共に
二〇〇六年七月一六日
キルギス天山山中にて
寺沢 潤世
アッラ・ドゥダーエワ女史
座下