ヨーロッパ人権裁判所は、チェチェン人の最後の希望−EUは判決を活用して人権侵害の根絶を

ヒューマンライツ/ウォッチなどの人権団体が、これまで31件にのぼるチェチェン問題に関するロシアの責任を認めた判決の活用についての声明を出しました。これによると、ヨーロッパ人権裁判所での判決は、<個々のケースでの補償をすればよいのではなく、同様の人権侵害が発生しないように、ロシア国内での努力がされなければならない>という考え方に基づいて出されているようです。そこでHRWなどの人権団体は、次期EU議長国のフランスに対して、今までの判決を<活用>すべきだと提言しています)

 フランスは、ロシア政府がチェチェンをめぐるヨーロッパ人権裁判所(ECHR)での判決を遵守するよう、次期EU議長国として求めるべきであると、各国人権NGO*1は訴える。ロシアに対して人権裁判所の判決への尊重を求めることは、EUとロシアの関係の中で、最優先事項とされるべきである。
 2008年6月10日、FIDHとHRWはパリでパネル・ディスカッションを開催し、チェチェンおよび北コーカサスでの人権侵害を終わらせ、犯罪者を処分するためには、人権裁判所の力に待つことが大きいと主張した。このパネルのメンバーには、専門家や、過去に裁判所で勝訴を勝ち取ったチェチェン人も参加した。
 人権裁判所では、チェチェンで発生した深刻な人権侵害について、ロシア側が責任を持つと述べた判決がこれまでに31件に及んでおり、その中では拷問、強制失踪(拉致)、違法処刑、さらにはロシア政府が状況を改善する努力を怠っていることについて、繰り返し批判している。
 「チェチェンの被害者たちは、ヨーロッパ人権裁判所だけが正義が実現しうるという希望を持っている」と、FIDHのベルハッセン代表は語った。「ロシアは、人権裁判所の判決を遵守し、徹底的な調査をする責任を負っている。しかし判決が確定してからも調査は開始されず、政府は虐待の実態を発表してもいない」
 「継続的な政治的圧力がないために、ロシアはチェチェンでの虐待をやめようとしないだけでなく、これらの犯罪の責任者たちを裁こうとしていない」と、HRWパリ支部長のファーデアウは語った。「ECHRの判決の履行とは、個々の原告に正義を配達することではなく、虐待した人間への不処罰を終わらせることだ。グローズヌイの復興によって、EUがミスリードされることはあってはならない。虐待は続いているし、数千人の強制失踪者は今も見付かっていない」
 ECHRは、加盟国内での人権侵害に関する最高機関である。もし国による人権侵害が発見された場合、その国は、同様の人権侵害が再発しないように処理し、欧州評議会のほかの加盟国の了承を得なければならない。
 「裁判所は人権擁護機構のなかで、唯一有意義に働いている」と、LHRのドゥボイス代表は語った。「フランスとEUは、裁判所の判決が遵守されるよう保証しなければならない。それが裁判所の有効性そのものを保証するのだから」

http://hrw.org/english/docs/2008/06/09/russia19059.htm

*1:人権のための世界連合FIDH、ヒューマンライトウォッチHRWヒューマンライツリーグHRL